テーマ:海外生活(7773)
カテゴリ:言語病理学
ニュージャージーの病院で働いているときの話です。
わたしは外来の患者さんを主に診ていたんですが、そのときはすごく忙しくって、わたしのスケジュールも空きが無しの状態、それも毎日残業でセラピーをやっていました。 ウェイティングリストはどんどん長くなっていくし、でもお願いだからセラピーに入れてくれ~と電話がかかる毎日。 そこに一人、旦那をセラピーにいれたいと言う女性が電話をかけてきました。 普段は「お客を他に回すのは商売にならない」という上からのプレッシャーで紹介などしないんですが、その時は忙しかったので、他の近くの施設を何件か紹介しました。 それでもしつこく電話をかけてきて、診てくれないのだったら病院の誰かに苦情をいれるとまで言われました。 もちろん、病院は「お客さん」の言い分をとるので、これは仕方がない(と、受けるから残業なのさ)、上とのいざこざで時間つぶすくらいならと、引き受けることにしました。 やはり私も人間、「このくそ忙しい時に、もう!」なんて思いましたよ。 電話で、「普段は大人の方だと一時間のセラピーですが、30分しか空いていませんので!」と仕事上感情は大げさに見せないにも、でも怒ってるのは明らか。 これで、「じゃ~、もう結構です」なんていわれても患者は沢山いる!なんて強気だったってのもあるけど。。 初めてセラピーに来られたときも、にこにこ顔ではなく、「遊びで来るなよ!」みたいな態度でしたよ。。お~怖い。 で、その患者さんの診断は、脳腫瘍。弟さんも脳腫瘍で亡くなっている。 腫瘍は手術で完全にとれなかった。セラピーが必要だ、と。 知的/言語的障害はTBI(脳外傷)の患者さんのそれに似ている。 電話番号を見てもその番号通りにボタンを押せない。 言葉がうまくでない。 反応が遅い。 など、障害がありましたが、毎週セラピーに来られてました。 私の態度のほうは、怒りはとっくにおさまり、これはどうだ、あれはどうだ、と患者さんの生活に役立つような方法を考えていました。 セラピーの成果はというと。。まばらでした。よい日もあれば悪い日もあり、改善の方向には向いていなかったというのが本音です。 ある日、その患者さんがふらふらしながら奥さんと部屋に入ってこられました。 顔色がよくありません。言葉もなかなかでてきません。 奥さんが「この人の脳腫瘍大きくなったんです。これ以上セラピーには来れないだろうと思うので、お別れをいいに来ました。」 「この人がお礼をしたいって言うんで」 このとき、心の中で「あんなに初めは私の態度悪かったのに、お礼だなんて。。」 って思ったら、泣けてきました。 それも歩くのさえ辛いというのに、わざわざここまでお礼を言いにだなんて。 普通は電話が多いんですよ。電話こないときだってあるんですよ。 それなのに。 いま、どうされてるんでしょう、あの患者さん。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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