保健師職能研修会(神奈川県看護協会):医療制度改革に伴う生活習慣病対策研修
保健師職能研修会に参加した感想講師の井伊久美子先生は保健師であり、現在は日本看護協会常任理事であるが、平成19年3月までは兵庫県看護大学教授であったため、標準的なプログラムの委員のひとりであった。プログラムの暫定版ができるまでの裏話などは、他では聞けない貴重な話であった。それは、特定保健指導にかかわる、医師・保健師・管理栄養士・健康管理の看護師の中で、まさにパワーゲームという状態で話し合いが行われたという。なるほど、ある程度、想像はつくものの、なかなかのお骨折りだったろうと思われる。しかしながら、あのプログラムは最低ラインであるから、あれを実行すれば良いと言う物ではないと力説されていた。このたび、看護協会のグループ支援モデルケースの詳細を教えていただいた。これは積極的支援で、一人当たり50,000円の支援であるというから驚いた。現実的にはそんな商品は売れそうにないからだ。世の中は需要と供給で値段が設定される。結局のところ、健康保険組合がいくらで特定健診・特定保健指導を買ってくださるかによる。いくら良いものであっても、高くて手が出ない商品はやはり売れないのだ。しかしながら、ブランドによる理想のモデルケースの存在はやはり必要である。それが研修会で公表されれば、参考にすることは可能だ。1年半前の平成19年秋、経済界ではこの特定健診・保健指導はビッグビジネスだとあおられ、あらゆる業界が準備を始めるべく新規参入した。ところが、平成19年秋、国民健康保険組合は入札で契約するのだというので、アウトソーシングを期待して新規参入した零細、中小法人は撤退を余儀なくされた。下請けの下請けでは、物を売る商売と違って、保健指導の薄利多売では商売にならないからだ。また、コンピュータソフトを絡めた運動プログラムのパーケージを売る業界も続出したが、やはりこれも売れない。単価が安くては導入する予算が取れないのだ。当法人では、平成20年度の積極的支援の契約は取れなかったということだ。それが財力が低下してきた健保組合の実情である。厚生労働省の指導のままに動いている健保組合は少ないと聞く。井伊久美子先生がおっしゃる最低ラインですら、実行できない現実だ。この先、この医療改革の行方は前途多難である。平成12年、鳴り物入りで始まったあの介護保険制度も当時ビッグビジネスだといわれ、多角経営に踏み切った法人も、制度改定の繰り返しで経営困難となり、不正請求などで社会的に抹殺されてしまった。健診畑にいた私も、平成12年にケアマネージャーの資格を取り、毎年、研修会に自己負担で出かけたが、人件費が高い保健師のケアマネージャーは必要とされず、現在ではそのほとんどがヘルパーが担っている。看護職によるケアプランは望ましいが、看護職には訪問看護をすることで点数が高く請求できるので、実際には看護職であるケアマネージャーは少ないのである。 同じようなことが特定保健指導でも考えられ、人件費が鍵となるであろう。以上