|
カテゴリ:映画ドラマ鑑賞
2013年制作 山田洋次監督
「東京家族」 小津安二郎監督「東京物語」」の現代家族事情版ともいえる。 瀬戸内海の島から、東京で暮らす三人の子供達のところに平山周吉老夫婦がやってくるところから始まる。 東京郊外で開業医の長男家族には、西村雅彦と夏川結衣、 美容院を営む長女には、中嶋朋子舞台技術で働く次男には妻夫木聡、その彼女に蒼井優、 そして老夫婦は橋爪功と吉行和子と、山田洋次監督らしい配役で、見ていて落ち着きのあるところ。 東京で忙しい日常を送る子供達と、老夫婦のタイミングが合わず、 夫婦は慣れない東京を右往左往する。 背景には、みなとみらい、スカイツリー、品川、浅草など、今の東京。 そのうち、吉行和子演じる母が倒れ急逝し、 一同は育った瀬戸内海の島に戻り葬儀を行うこととなった。 東京と広島を行き来する私には、とても感情移入できる映画だった。 3分ごとに電車が来る分刻みの日常の東京、 心に余裕のない人々と堅実という言葉が流行らない生活。 瀬戸内海の小島で生きてきた平山夫婦には、すでに興味のない場所だ。 山田洋次監督が選んだ瀬戸内海の小島のロケ地は、 私の育った島ではないが、馴染みのある場所だった。 私の島は大きな橋で本土とつながったが、このロケ地はいまだに船で渡るのみ。 島の民家は昔の姿を残し、猫の道のように入り組む。 それゆえ、山田洋次監督に選ばれたのだろう。 10年近く前にこのロケ地の島で、叔父の葬儀をした。 ずっとこの島で商売をして生きてきた人だった。 私より10歳くらい上の子供達4人は、当時も島には残っていない。 一人ぼっちになった叔母は島に頑張って住んでいたけど、 今年86歳、認知症を発症し、今は長男の近くのホームに入居した。 同じような事情で島を離れ、空き家になった家をロケに借用したようだった。 小高い場所にある家から輝く海と小島が見える。 みかんと小魚と人々ののどかさと、現代からは取り残されたようであるが、 ここでたくましく、静かに一生を終えることができるのなら、羨ましいともいえる。 一人ぼっちになった平山老人は、東京の子供達に引き取られるわけでなく、 地域の人々に助けられながら、余生を生きていく。 東京の生活に安らぎは見出せないと悟った東京への旅だったのだ。 もし私が長生きするのなら、今は誰も住んでいない故郷の島の家をもらうだろう。 小高い場所にある墓から、光る海と小舟と小島が見えて、 私は幼い頃から島を出るまで、祖父に連れられて、庭の小菊をちぎって、お水と線香を持って、 毎日夕刻に墓に通った。 そして毎日、祖父と夕日と海をただただ眺めていた。 時間の止まった日常は贅沢だと、半世紀生きてきて気づく。 私の子供達も東京で生きていくようだけど、 東京で定年を迎えたら、パパとは速攻で地元に戻るよ!! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[映画ドラマ鑑賞] カテゴリの最新記事
|