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吟遊映人 【創作室 Y】

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2012.05.20
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20120520

「悪者に追われてるのよ。守ってあげなきゃ・・・ハンナを見捨てるの?」
「違うよ・・・ハンナはベルリンのグリムの家に行くって。パパに会いに行くんだ」

カテゴリとしてはスリラー映画に属する作品だと思うが、雰囲気は実にファンタジックだ。
作中の会話にも出て来るが、グリム童話の世界観がそこかしこから漂っている。
本当は恐ろしくてたまらない童話だから、美少女キャラとは対照的に、陰惨で冷酷な人間の横顔がくっきりと映し出されている。
主人公は16歳の美少女だが、ジャンヌ・ダルクのような使命感に燃える女戦士というより、もっと人工的でドライに描かれている。
また、悪役として登場する女性CIA諜報員のマリッサは、童話のキャラに例えるなら間違いなく魔女である。
こういう設定からして、普通ならB級モノになりがちなのに、この『ハンナ』に関しては余りそういう野暮ったさは感じられなかった。
ひとえに、監督の高度な演出力にあるのだろうと推測する。

16歳の少女ハンナは、父エリックとフィンランドの森の中に2人きりで暮らしていた。

ハンナの狩猟の腕前は見事なもので、一矢で鹿を仕留めるほどだった。
また父親から、素手で身を守るための戦闘能力を叩き込まれ、その強さは少女の腕力を超越していた。
さらに、英語以外の語学にも堪能で、ドイツ語、スペイン語、アラビア語をマスターしていた。
人里離れた森の中で暮らすことから解放されたいハンナは、外界に出て行きたいと、父を説得するのだった。

もともとこの手のスリラー映画は大好きで、完璧な美の内に秘める猛毒を表現した世界観に、共鳴せずにはいられない。
胎児のころ遺伝子操作によって、人並み外れた戦闘能力を持ち、生きる人間兵器となったハンナの、思春期を経て森の外へと向かう自立心など、見事に表現されていた。
主人公ハンナ役に扮したシアーシャ・ローナンの、感情に淡白な演技は抜群で、細身の体が鋭い凶器となる時など、そのメリハリに驚愕した。
また、マリッサ役のケイト・ブランシェットは言うまでもなく、世にも恐ろしい女性悪役として周囲を威圧していた。
しかし、一番の功績は、この不思議な世界観を生み出した監督のジョー・ライトにあると思われる。
好きな人はもっと好きになるし、理解する作品ではなく、感じる作品だと思った。

2011年公開
【監督】ジョー・ライト
【出演】シアーシャ・ローナン、エリック・バナ、ケイト・ブランシェット

また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。
See you next time !(^^)





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最終更新日  2012.05.20 07:57:04
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