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テーマ:コラム紹介(119)
カテゴリ:コラム紹介
【長崎新聞 水や空】
~社会人1年生~ 「君は文章が下手だ」 そう言い放つ上司を前に、うつむく青年は、作家、三島由紀夫が社会人1年生のときの姿である。大学を出て大蔵省に入り、大臣の演説草稿を書かされた。懸命に仕上げて提出したところ、非情な言葉が返ってきた。 原稿は別の上司の手で書き直された。三島の苦心の文章は跡形もなく消え、できたものは「紋切型の表現」であふれ、いかにも大臣演説らしい「独特の文体で綴られていた」(三島著「文章読本」)。 後に、明晰(めいせき)、豊潤な文体で名声を得る三島の、このときの心境を思うと同情を禁じ得ない。 ただ、このエピソードには、社会人1年生が学ぶべき二つの重要な教訓が含まれていて面白い。 一つ目は、仕事では、自分に何が求められているかを、よく考えて、適切に行動しなければならないということだ。小説では名文でも、演説草稿には使えない。自分に与えられた職務に応じた行動ができなかった三島は未熟であった。 二つ目は、隠れた才能など、他人には簡単には見えないということだ。だから、才能を認めてもらおうと焦っても仕方ない。才能は自分で磨いていれば、それでいい。自分を信じて努力を続けることが大切なのだ。 きのう、多くの若者が社会人の仲間入りをした。外と内、あるいは公と私。未来に延びる2本のレールにバランスよく足を掛け、自然に前に進めるようになれば、もう立派な社会人である。 (4月2日付) ~~~~~~~~~~~~~~ 「君、文章の修練をしたらどうか」 こなた吉村昭氏。会社勤めをしていた頃に書類を提出した東京都庁の担当係長にそういわれたそうだ。(吉村昭著「私の文学漂流」) ともにその世界で名をはせた方だから後日談となるわけだ。 こういうことは巷で溢れている。長崎新聞のコラム氏に加えて「三つ目」を申し上げる(笑) その担当者がいるのである。つまり三島氏の上司、吉村氏の担当係長は、そのためにいるということだ。 新社会人の方々は、その事実に気がついてほしい。 ただ厄介なのは上司や担当係長の「好み」が多分に入ること。 吉村氏は「坊っちゃん」や「大菩薩峠」を読んで文章のいろはを身につけるよう係長に言われたという。そういうことなのだ。 ミモフタモないようで申し訳ないのだが、現実と折り合いをつけることが、いわゆる社会人らしくなることでもあるのだ。 大事なのは、その中で志を失わずに自己の目標を達成させることだ。 中村元先生はその志と目標を「誓願」といい 『いかなる困難も誓願のまえには無にひとしい』 と喝破している。 がんばれ!新社会人諸君(^^) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013.04.08 06:32:38
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