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吟遊映人 【創作室 Y】

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2015.09.12
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【ゼロの焦点】
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「思い切って、一思いに突き落としてよ」
「どうしてあなた、そんなことを、、、?」
「どうしてって、、、? おまえにできないわけがないだろ。あの人が死んで、ついでにあたいが死んじまえば、差しあたっておまえの汚い過去を知っている者はだれもいなくなるじゃないか。大きな会社、有り余るお金、立派な屋敷。おまえの不幸せは暗い過去だけだからね」


松本清張の代表作でもある『ゼロの焦点』は、これまでにも何度となく映画やテレビドラマなどで放映されて来た。
2009年にも、松本清張生誕100周年記念とかで、広末涼子が主演の『ゼロの焦点』が公開された。
だが今回、私はあえてオリジナルを見ることにした。
1961年公開の、しかも白黒画像のものだ。
この作品は小説の持つ、暗く陰鬱で、太平洋戦争の消えない傷痕を色濃く反映した作風となっている。
殺人の動機も営利目的ではなく、知られたくはない暗い過去を抹消するための行為という点が、ますます切なさを誘う。
というのも、加害者は戦後十数年経って社長夫人の座におさまったものの、実は、敗戦後米兵相手の“パンパン”だったのだ。
生きるためのやむをえない選択だったにしろ、そのことは過去の汚点の何ものでもなかった。

あらすじはこうだ。
禎子は、広告代理店に勤務する鵜原憲一と見合い結婚をした。
憲一はもともと金沢支社に在籍しており、結婚を機に東京本社に栄転となったのだ。
結婚してわずか一週間後、仕事の引き継ぎをして来ると言って金沢へ出張することになった。
禎子は、上野駅まで憲一を見送りに行くのだが、生きた夫の姿を見るのは、これが最後となってしまった。
予定を過ぎても帰らない夫を心配して、禎子は勤務先や憲一の実兄に連絡を取る。
会社側も北陸で行方不明となった憲一を捜索するため、警察の協力を得ることにする。
そんなある日、禎子のもとに、憲一の兄嫁から「うちの主人も行方不明なの」という連絡が入る。
急遽、禎子は兄嫁のもとに駆け付けると、金沢の警察から憲一の実兄が殺されたという電報が届くのだった。

作品のあらゆるところで感じられるのは、女性の社会的地位の低さとか、偏見による差別である。
敗戦後のどさくさに紛れて、忌まわしい過去を持った女性が死にもの狂いで、現状を維持するために、殺人を繰り返していくのだ。

主人公・禎子役は久我美子である。
さすが華族出身の令嬢なだけあって、上品な身のこなしが美しい。
室田佐知子役に高千穂ひづる。
宝塚歌劇団出身の売れっ子女優ならではの、気品の中に気高ささえ感じさせてくれる名演技だ。
田沼久子役に有馬稲子。
今さら言うまでもないが、名女優の名演技である。
白黒画像なのにまったく違和感もなく、むしろ作風のどんよりとした暗さがそこはかとなく効果的に表現されている。
監督は『砂の器』で有名な野村芳太郎。
音楽は芥川也寸志。(龍之介の息子)
脚本は橋本忍と山田洋次というそうそうたるスタッフで固められている。

作品ラストの冬の能登半島の断崖で、強風に煽られながら、主人公が加害者を追いつめていく演出は、この映画が原型らしい。(ウィキペディア参照)
まったく欠点の見つからない見事なサスペンス映画だった。

1961年公開
【監督】野村芳太郎
【出演】久我美子、高千穂ひづる、有馬稲子


※ご参考
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吟遊映人過去記事 広末涼子主演の『ゼロの焦点』はコチラまで


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最終更新日  2015.09.12 07:52:58
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