2014/08/31(日)18:00
一緒にご飯をつくりましょう。
きょうは帰宅が遅くなったので、晩ご飯は娘と行きつけの食堂へ。
カウンターに座ると隣に知人の女性がひとりで飲んでいた。
女性は60代。
半年前にご主人をがんで亡くされ、今はマンションで一人暮らし。
「あんたやから話せるんやけどね」
女性は、そう切り出すと、
ご主人の思い出を語り始めた。
楽しかったこと。
苦しかったこと。
許せないほど、悔しい思いをしたこと。
女性は30分ほど一気に話し、最後にこう言った。
「あの人とは、いろいろあったけど、
会えるんだったら、今すぐにでも会いたいよ。
私はやっぱり、あの人が大好きやもん。
年下なのに、なんで私より先に死んだんやろか。
ねえ、いつまで、この苦しみは続くんやろうか」
ぼくは、「そうですね」「きついですね」を繰り返すだけ。
気のきいた言葉は、何も見つからなかった。
娘が眠そうな顔をしていた。
ぼくは、お勘定を済ませ「じゃあ、きょうはこの辺で」と言って席を立った。
「あー、すっきりした。また、話相手になってね」
女性はぼくと娘に笑顔で手を振ってくれた。
「人生は刻々変わり、家族の状況もあなたも変わり・・・。
その中で、人とのつきあい方もつきあう相手も刻々と変わっていく。
それが人生ではないでしょうか」
数日前、新聞に掲載されていた詩人の伊藤比呂美さんの言葉を思い出した。
「あのころが一番きつかったね。でも、もう大丈夫。今は幸せ」。
そんなふうに振り返ることができる日が必ずやってくると思う。
ぼくにできることは、話に耳を傾けること。
一緒にご飯を食べること。
8月9日(土)と10日(日)の2日間、
福岡県福津市津屋崎に「海のイスキア・夏」を開設します。
津屋崎の旧家で、ともに過ごし、語り合う集いの場。
娘と一緒に、みそ汁づくりの準備をして、お待ちしています。
海のイスキア
はなちゃんのみそ汁(文藝春秋)
はなちゃんのみそ汁(文春文庫)
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