「国民的作曲家・古関裕而の世界」~NHKのラジオ番組から
NHKのラジオ番組に『ひるのいこい』というのがある。1952年(昭和27年)から続く長寿番組だ。もうだいぶ前からテレビ視聴を離れて、いまはラジオ聴きが多いのだが、正午の時間帯はあまり聴いていなかった。昼食時にはテレビのニュース番組を視聴していたからだ。しかし昼のニュースもラジオ聴きとなり、ニュースに続く番組『ひるのいこい』に出会った。リスナーからの地域便りなど紹介し、その合間に音楽をかけるという構成で高齢者向けの落ち着いた内容だ。私が惹かれたのはそのテーマ曲。荘厳な出だしから始まり、昔の時代劇映画のBGMを思わせる名調子風リズムなどバラエティーに富んでいるのだが、語りの裏で流される数曲がじつに心地よいのだ。日本の原風景を思い起こさせるその曲調に’70年代の空気感を感じ、懐かしさこの上ない。聴きながら、作曲者は冨田勲さんかなと思ったのだが、古関裕而さんだった。古関裕而さんというと、私はテレビの音楽番組『オールスター家族対抗歌合戦』(フジ系、1972年~)の審査員をしていたことを覚えているくらいだった。少し経歴を見ると、戦前~戦後を通してなんと5千にも及ぶとされる曲をつくった大作曲家。NHKにも多くの番組に楽曲を提供している。興に乗って古関さんの音楽をレンタルCDで聴いてみた。『NHK番組による「国民的作曲家・古関裕而の世界」』というタイトルだ。童謡、ドラマのBGM、スポーツ番組のテーマ曲などのオムニバス版なのだが、さすがに時代のちがいもあって『ひるのいこい』のテーマ曲以外は楽しめなかった。クラシック版のほうがよかったかな。古関裕而さんは明治42年(1909年)のお生まれで、平成元年(1989年)に亡くなられた。昭和の時代をまるまる生きられたわけで、その間ずっと作曲に携わった生涯だから、日本の近代化を文化の面で進めた功労者といっていいだろう。古関さんのメロディー、楽曲のアレンジには昭和の空気、香りが満ちている。昭和時代後期に多感な時期を過ごした者としては、原日本の郷愁感に浸らずにはいられない。また古関さんは福島県のご出身であったということで、両親が福島県出身である私も、どこか親しみ近しさを覚えるところがある。~古関裕而生誕 100年記念~ NHK番組による 国民的作曲家・古関裕而の世界 [ (オムニバス) ]