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先月6月15日(金)、香港取引所が、世界最大の非鉄金属の商品取引所 London Metal Exchange(LME)の買収についてLMEと合意しました。
日本でも6月27日(水)の日経新聞などで報道がなされています。 買収金額は約14億ポンド(約1,700億円)です。この価格が破格に高いことは、LMEの2011年の最終利益の180倍になっていることから明らかです。 LMEは非鉄金属取引の価格指標としてのゆるぎない地位を築いており、その収益性が高いことは確かです。しかし、優良な上場企業の時価総額が年度の最終利益の20~50倍であることからしますと、いかにこの価格が高いかがわかります。 香港取引所は、香港取引所自身に上場されていますが、筆頭株主は基本的に香港政府ですし、制度的に香港政府が13人の取締役のうち6人を指名する権利を有しています。実質的に、香港取引所の経営権は香港政府が持っているのです。一定の制度的な独立性が保持されているとはいえ、香港は中国の一部ですので、実質的には中国政府が今回のLME買収を戦略的に決定したと言えます。 6月18日に開催された産業構造審議会商品先物取引分科会(産構審)において、住友商事の高井理事がコメントしていますが、これまで世界の鉱物資源、エネルギー資源を買いあさってきた中国が、今度は鉱物資源価格の決定の場を抑えにきたのです。 6月6日(水)の日経新聞夕刊はその1面で、大豆、アルミ地金、石油化学原料ナフサといった食料、資源について、日本は世界の価格決定の場で決まった価格に割増金を上乗せした価格での輸入を余儀なくされており、この割増金が2012年に入って値上がりしているとの報道をしています。 1998年の商品取引所法改正によって、日本の商品取引所における上場が、試験上場を原則自由化することによって抜本的に促進しました。この改正を受けて、東工取の石油(ガソリン、灯油、原油)の上場が実現しましたが、石油特には原油の上場によって、通産省がひそかに期待していたのが、日本の需給を反映した価格決定を行うことによって、「アジアプレミアム」と呼ばれていたアジア向け中東原油の割増金を解消し、日本のエネルギー調達コストを削減することでした。 日本が実現できなかった価格決定の場の掌握を、中国は今回、非鉄金属について実現しようとしているのです。 年内とされる上海先物取引所の外貨建ての原油上場によって原油について想定がされますが、非鉄金属についても、日本は中国で決定された価格に割増金を払って輸入することになりそうです。 日本に、価格決定の場となる、世界1,2位の流動性の高い商品市場があれば、日本の需給を反映した価格に基づいて食料、資源の調達ができる。 私が1988年に商品取引行政に携わって以来の見果てぬ夢が、また一段遠のいたようです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012.07.20 23:42:32
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