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ロンドンオリンピックが閉会しました。 2011年のワールドカップ優勝によって、他国から日本チームはより入念に研究され、国内ではオリンピックでの金メダルを期待する見えない圧力もある中、女子サッカー初のオリンピックメダルである銀メダルは賞賛に値します。当然、試合で活躍した選手たちは立派ですが、なでしこのリーダー佐々木監督については、改めて偉大なリーダーだと感銘を受けました。 引き分けを選択した佐々木監督 佐々木監督については、なでしこをワールドカップ優勝に導き、アジア人として初となるFIFA女子世界年間最優秀監督賞を受賞したことからも、監督としての人格、能力、識見の高さは周知のところです。今回改めて佐々木監督のリーダーとしての偉大さに私が感嘆したのは、予選リーグ最終戦での「2位通過」すなわち、リーグ最下位の南アフリカとの最終試合を「引き分け」とすることを選手に指示したことです。 この南アとの試合後のインタビューでの佐々木監督のコメントをご紹介しましょう。 「次の準備も考えて、相手はどこでもいいのですが、ここ(カーディフ)に残ることがベストだと考えました。グラスゴーに行くとなると、ヒースロー空港に戻ったり、8時間くらいかかってしまいますので。 「(後半12分に川澄を投入したとき)川澄には、向こう(スウェーデン・カナダ戦)が2-1なので引き分けになるかもわからないので、申し訳ないけどカットインの素晴らしいシュートはやめてくれと、言いました。 「引き分け指示」の戦略性 ワールドカップやオリンピックの決勝トーナメントでは、優勝するために途中で負けることが許されません。また、中3日程度といった短期間の間に強い相手と3試合も戦い続けなければなりません。このような状況においては、試合後に次の試合のために移動があるかないかは、選手の体調に影響を及ぼし、次の試合の結果に大きな影響をもたらします。 私は、イタリア在住時代にファンになったセリエAの「ラッツィオ」をはじめとして、好きなチームを応援してのサッカー観戦が好きです。ただ、サッカー自体については、素人です。サッカーを熟知した通産省時代の先輩が、なでしこのワールドカップ優勝の要因を解説する中で、次のことを教えてくれました。 ワールドカップ主催国のドイツは、予選リーグを1位通過した場合、準々決勝に勝てば、直後に移動して準決勝を行うものの、勝てば次は移動せずに、決勝戦を迎えられるよう自国のドイツをうまく配置しました。予選リーグは想定通り1位通過したのですが、準々決勝で日本にまさかの敗戦を喫してしまいました。 ロンドンオリンピックでは、予選リーグを1位通過した場合には、8時間の移動を経て準々決勝を戦い、また同じくらいの時間をかけて移動しての準決勝となっていました。予選リーグ最終戦の「カーディフ」に残って準々決勝を迎えることは、選手の体調にとって極めて重要なことでした。ただ、この重要な結果は、通常は勝つことを目指して行うものである試合、目の前の南ア戦について、「引き分け指示」を選手に出すことによって初めて達成されたものです。指示がなければ、予選敗退が確定していた南アになでしこは大勝していたかもしれません。 「引き分け指示」は、場合によっては、勝つために、または点を取るために試合に臨んでいる選手のモチベーションに悪影響を与えるかもしれません。また、万一移動せずに迎えた準々決勝で敗退した場合には、「勝つことを目指して戦うスポーツ少年・少女に悪影響を与えた」といったメディアの批判にさらされる危険性が十分にありました。 チームとしての理解 モチベーションとの点では、選手はこの「引き分け指示」について100%の納得を示しています。インタビューでの次のコメントからよくわかります。選手との信頼関係、コミュニケーションも完璧な中、この指示がなされていたのです。 「もちろんゴールを決めたかったし、勝ちたかったけど、金メダルは、どんな手も使わないと取れないと思うし、そういうことも必要。すべてはそこなので、選手も納得してっていうことです。やっぱり、コベントリーからカーディフまで移動してきただけですごい疲れたから、(首位通過で)グラスゴーに行くことを考えれば、こういう考えもあると思う。」(丸山選手) 私は、サッカーファンになって、かれこれ10年以上スタジアムやテレビで観戦をしています。 今回、佐々木監督の戦略的な「引き分け指示」を目の当たりにして、リーダーは、佐々木監督のように、リスクと責任を一身に背負っての「戦略的な決定」をしてチームに成功をもたらす者であるべきと、学びました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012.08.20 11:33:58
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