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2012.12.25
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ICEのNYSE Euronext買収発表

この12月20日(木)、取引所再編について大きな発表がなされました。
アメリカのアトランタに本社のあるICE(Intercontinental Exchange)が、ニューヨークに本社のあるNYSE Euronextを買収することについて両社、具体的には両社の取締役会の間で合意がなされたのです。両社とも、アメリカに本社がありますが、これまでの合併・統合によって、アメリカ、ヨーロッパにまたがって市場を形成しています。
ICEは、原油の北海ブレントに代表されますが、世界の原油・石油製品先物の出来高の半分を構成している、商品を主体としたデリバィテブ取引所です。NYSE Euronextは、ウォール街にある世界最大の株式市場、ニューヨーク証券取引所を運営しています。


買収スキームの詳細

具体的な買収は、ICEが、NYSE Euronextの株式に対して、1/3を現金で、2/3をICE株式で対価支払いをすることによって行われます。発表前日の12月19日のICEの株価の終値を基にしますと、買収総額は82億ドル(約6,900億円)です。同じく12月19日のICEの株価でみた場合、NYSE Euronextの株価に対して38%のプレミアムを乗せた評価となっています。買収成立後のICEにおいて、現行のICEの株主の比率が64%、現行のNYSE Euronextの株主の比率が36%となります。経営陣は、トップとなるCEOにICEのCEOが就任し、これに次ぐPresident(社長)にNYSE EuronextのCEOが就任します。
買収の完了は、両社の株主総会での承認、アメリカ、ヨーロッパの関係する当局の承認を経て、2013年後半と予定されています。


買収の主体

12月21日(金)の日経新聞に報道されていますが、売上高ではNYSE EuronextがICEの2.5倍となっているものの、純利益ではICEの方が上回っています。NYSE Euronextが現物の株主体の取引所であり、ICEがデリバティブ取引所であることが、この純利益の差、さらには株式時価総額の差をもたらしています。この結果、両社の統合が、ICEによるNYSE Euronext買収との形になるのです。


株よりデリバティブ

取引所にとって収益の源(みなもと)となる上場商品について、株の場合は新たに上場をする企業があってはじめて数が増えます。これに対して、デリバティブの場合は、例えば、鉄鉱石、海外の取引所を含めての様々な株価指数、といったように取引所の工夫によって上場商品の数を増やすことが容易です。
また、競合する主体として、株の場合は、低コストで売買のできる私設取引所が存在し、各国において株の取引に占める取引所のシェアは年々低下しています。売買が成立して株の受け渡しまで最長でも2日程度ですから、私設取引所でも、取引所と同じに安心して取引が行えます。これに対して、デリバティブの場合は、競合相手として私設の主体が存在しないといえます。受け渡しがすぐに終わる現物の取引と異なり、デリバティブはお金や物のやり取りが先になります。このため、私設の相手、たとえば仮にゴールドマンサックスであったとしても、相手が破たんをして、本来なら得られたはずの利益を失う可能性があります。特に、リーマン・ショック以降、私設の相手とのデリバティブ取引、すなわちOTC(Over The Counter)取引は取引所取引に対して低調となっています。
NYSE Euronextからしますと、今回の買収合意は、株主体の取引所であるがゆえに将来の成長が望めない中でICEに統合されることによって存続を図ったといえます。
株よりデリバティブ、との取引所ビジネスの流れをまざまざと示したのが今回の買収です。


デリバティブ取引所再編

200年を超える歴史ある世界最大の証券取引所であるニューヨーク証券取引所が買収されるのですから、株よりデリバティブとのことが、今回の買収をめぐる話題の一つであることは確かです。しかし、将来に向けて今回の買収を見た場合、特筆すべきは、世界のデリバティブ取引所競争において、ICEがCME追撃を狙って拡大をしたということです。
2012年の1月から9月までの出来高で見た場合、デリバティブ取引所の1位は22億枚のCMEです。2位がEurexの18億枚です。Eurexは、株と金利の先物が主体の、ドイツ証券取引所傘下の取引所です。なお、ドイツ証券取引所は、NYSE Euronextを93億ドルで買収することに合意していましたが、ヨーロッパにおけるデリバティブ取引のシェアが高くなることが独占禁止法上問題だとしてヨーロッパの当局であるECによって買収が2012年2月に否認されています。ICEは13位の3億枚ですが、15億枚で4位のNYSE Euronextの買収によって3位の18億枚へと駆け上がることになります。


デリバティブの商品ラインアップ拡充

商品、株価指数、為替の先物はICEがすでに上場していますが、NYSE Euronextの買収によって金利先物をこれらに加えることになります。プロップ・ファーム(自己取引を行う会社)に代表される、デリバティブを行う投資家は、値動きのある様々なものを取引の対象とします。取引の対象が一つの取引所に集約されていれば、株先物で含み損があっても商品先物の含み益で相殺できれば、追加の証拠金支払いをしなくて済む、というように資金効率を高めることができます。投資家にとって、ラインナップが豊富なデリバティブ取引所はより魅力となります。出来高もさることながら、今回、CMEと同じ商品ラインナップを持つことによって、ICEの競争力が増します。


取引所統合によるコスト削減

取引所ビジネスは、取引を成立させるための巨大なシステムをもとにして行われますので、統合によってシステムコストの削減が期待できます。今回の買収が実現し、成果を完全に達成する統合2年後には年間で4.5憶ドル(約380億円)のコスト削減が達成されるとのことです。コスト削減は、利益の増大として配当によって株主に還元される部分もありますが、新たな上場商品の開発、取引手数料の引き下げといった形で市場参加者にも還元されます。このコスト削減効果も、買収後のICEの競争力拡大に貢献します。



遅れての日本

欧米においては、2000年代前半からデリバティブ取引所の再編が進んでいます。
日本も、遅ればせながら、2013年1月に、東証・大証の統合によってJPX(日本取引所グループ)が誕生します。システム統合などの結果、JPXは年間70億円のコスト削減効果を見込んでいます。しかし、デリバティブの上場商品のラインナップについては、株、為替の先物にとどまり、商品先物、金利先物は含まれません。アジアのメイン・マーケットを目指すのですから、世界制覇を競うCME、ICEと、少なくとも同じラインナップが必要です。
今回の総選挙で与党に返り咲く自民党は、選挙に際して掲げた公約のJ-ファイル2012総合政策集において、40.「アジアNo.1の金融・資本市場の構築」を掲げ、「『日本総合取引所』の創設」をうたっています。この公約のもと、世界のデリバティブ取引所再編の流れに、遅ればせながら日本が追いついていく政策的な後押しが期待されます。







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最終更新日  2012.12.25 14:24:39


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