号外:コンプライアンス不況
今日の日経平均株価は500円以上の値下がりでした。「日本、独歩安!」と言われていたアジアマーケットも、大幅安となっています。マーケット関係の方は、不眠不休の対応だと思います。日本の株安も「サブプライム問題」で片づけられている節がありますが、日本がサブプライムで受けた打撃は、金融庁の発表などによるとわずかです。円高と物価高を反映したものという説も有力ですが、円高は輸出入高国日本にとっては、購買力が上がるチャンスで、物価高も加味すると、不況どころか、1985年のプラザ合意を思い出すように、バブルに突入といっても良い状況です。当時と決定的に違う点が一つあります。それは、「コンプライアンス」です。プラザ合意当時、私は大学生でしたが、あの頃は、企業重視、サプライサイド重視の経済政策で、そのような本が横行していました。今はどうでしょう?福田内閣の「消費者重視」のかけ声。消費者重視政策は良いことですが、政策が過剰になると、消費者の反応まで過剰になり、企業が自由に活動する範囲が狭められてしまいます。実際、金融業界では、(そればかりが理由ではないと確信していますが)金融商品取引法の施行後、投資信託もその裏付けとなる仕組債(仕組債とは何か、投信とどういう関係にあるかという説明は今回は省略します。)の需要も振るわなくなっています。金融商品取引法は、公正な価格形成を実現するために、投資者(=消費者)の保護を考慮した法律です。投資者保護は、正しい考え方です。簡単な例を挙げますと、投資者が保護されなければ、誰も株式投資をしなくなり、株式会社で成り立つ日本経済は、完全に沈没します。投資者は保護は、絶対に必要な考え方です。でも、過剰に投資者(=消費者)を保護すると、その裏側の販売者(発行者や販売会社)の活動を制限することになるのは、自明の理です。その結果、企業活動は停滞します。つまり、消費者保護は、行き過ぎると、日本経済を根底から揺るがす要因になります。消費者保護の行き過ぎは、法令・規制の厳しい適用となって現れます。最近、企業不祥事が増えたような印象がありますが、企業不祥事が増えたのではなく、法令・規制の適用が厳しくなったに過ぎません。「だから、企業は、もっとコンプライアンスを!」ということになりそうですが、コンプライアンス精神と法令の厳しすぎる適用とは、何の関係もありません。それにもかかわらず、企業不祥事が報道されるたびごとに「コンプライアンスを軽視した」という記事を見ると、唖然とせざるを得ません。このままでは、コンプライアンスの名のもとに、次から次へと営業停止に追い込まれる会社が出てくる可能性があります。コンプライアンス不況!現在の日本経済の悪化傾向を一言で言い表すと、間違ったコンプライアンス概念がもたらすコンプライアンス不況であるように、私には思えてなりません。