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テーマ:韓国!(16972)
カテゴリ:books & comics
はじめての読書会。
昨年12月に日本語訳が出版された チョ・セヒ 趙世熙 조세희 の1970年代の連作 「こびとが打ち上げた小さなボール 난장이가 쏘아올린 작은 공」の読書会へ。 翻訳された斉藤真理子氏がモデレーター。 印象的だったのは「칼날(刃)」(1975年)の章。 連作の中でいちばん最初に(書かれ)発表されていた作品だが... 境界者、河原者、社会の透明人間のように生きる こびと/난장이に寄り添い こびとの命を救おうとするシネの姿には希望を感じ つよく共感した。 参加者からもシネへの共感が多かった。 個人的には 正義感が強くて鉄火なシネが自分に似ている部分が多く共感したが... タルトンネ的、 相手のところ、相手の立場や心情にまで急降下で降りて行く... 落差と深みが 激しさ、熱さとなって表れているようなシネの姿。 斉藤氏によると 日本にはいないタイプの女性、一方韓国ではこういうストレートな人は結構いる、 とのこと。 日韓の違いを越えて 日本の読者がシネに共感するのは理想的な率直さ、 精神の瞬発力への憧れもあるからなのだろうか。 「こびとが打ち上げた小さなボール」は1981年に アン・ソンギ主演、イ・ウォンセ 이원세 監督により映画化されている。 (韓国映画チャンネル 最近のドラマではお母さん役クム・ボラの ばら色の頬が可愛くて可愛くてෆ(๑˃ڡ˂๑)ෆ) 後世の作品 -文学を越えて- にも少なからぬ影響を与えていたのでは... 例えば1995年のドラマ「砂時計」のヒロイン ヘリンが労働者に共感し弱い側に立つ姿は 財閥創業者の孫ジュンホ(?)を彷彿とさせ、 そこにシネを足したような印象も受ける。 また、ソウルオリンピックが終わった後も続く 開発、再開発事業 それに伴う撤去民は 比較的最近の映画『かわいい 귀여워』(2004年) 等でも連綿と描かれて来ている気も。 小説の描写のように 食事をしているところに撤去に突入されるというスタイルは その後の映像作品などで受け継がれてきてもいる。 欧米(「ブリキの太鼓 Die Blechtrommel」や 『Dr.パルナサスの鏡 The Imaginarium of Doctor Parnassus』)や韓国(の映画や文学)と相違もして 最近の日本ではあまりなじみのないこびと。 一方、ユ・アイン、キム・ユンソク主演の 多文化共生な映画『ワンドゥギ』で主人公の父親はこびとだった。 韓国映画はごく最近の作品にも こびとが登場している。 現代を予言する、見透かすような描写、表現も印象的。 クラインの壺の絵が作中に登場するが 21世紀に見ると 新自由主義経済の行き詰まり、閉塞感を表しているようにも思える。 労働者が「技術に魅せられる」 「経済的な拷問」という表現は 搾取されつつも そんな新自由主義経済に依存せざるを得ない現代人の葛藤も仄めかす。 一蹴することが出来ない生態系に隷属する息遣いが表れてもいた。 技術に魅せられ それが突破口になりここから抜け出せるのか。 魅了する技術を餌に利用されているだけではないのか。 あるいは魅せられて絡めとられて 麻痺しながら隷属し 利用され搾取されるのか... 罠、餌のように発光する経済... 資本主義が抱える問題を普遍的に描きもする。 韓国だけの問題ではない、と 1970年代を世界もろとも刻み込んでいた。 経済まわりだけでなく 現代社会を表したような描写 「あの家は精神がない」もなかなか強烈。 韓国語の「精神がない」は日本語にはない表現なので 日本語にうまく置き換える・翻訳するのはむずかしい部分だが... 直訳して 日本語でも「精神がない」と言ってしまうと より空虚で空っぽな状態が視覚化もされているよう。 続いて 「同じ世界に生きているはずなのに お互いの言うことが理解できない」などは 21世紀に顕著になった 「不通」社会を表してもいて 作家の先を見通した感受性、炯眼に感銘を受けた。 「不通 불통」がよく表れてもいた演劇 とはいえ 凄まじい社会の現実や悪意が烈しく描写される一方 ヨンヒが廃水にパンジーを二輪投げ入れる場面など 暴力的な現実の前に佇むばかりの美が表現もされている。 どこか、 김기덕の映画などにも通じるだろうか... 熾烈な時間の層の中で生きている描写が共通するよう。 イ・スンウ「香港パク」は 時間の層がもう少し圧縮された激烈さがあるが... 文学の地図、世界地図 余談ですが 正書法により タイトルの 「난장이가 쏘아올린 작은 공」は 1988年に「난쟁이가 쏘아올린 작은 공」に変わっていたのですね。 韓国の人は タイトルを略して 난 쏘 공 と呼ぶそう。 日本では (むかしの文学作品などで) こびとは侏儒と書かれていたことも... 芥川龍之介「侏儒の言葉」 侏儒は少々ファンタジックでニュアンスが異なる気もするが 「こびとが打ち上げた小さなボール」の英題は The Dwarf ドワーフ で 妖精っぽくなっている... 白雪姫と七人のこびと、のこびとのように... 映画化作品の英題は こびとがmidgetになっているが 字幕ではやはり dwarf ... to be continued...!? buzz KOREA Click... にほんブログ村 韓国映画 にほんブログ村 映画 にほんブログ村 映画評論・レビュー にほんブログ村 韓国情報 にほんブログ村 K-POP にほんブログ村 Copyright 2003-2024 Dalnara, confuoco. All rights reserved. 本ブログ、サイトの全部或いは一部を引用、言及する際は 著作権法に基づき出典(ブログ名とURL)を明記してください。 無断で本ブログ、サイトの全部あるいは一部、 表現や 情報、意見、 解釈、考察、解説 ロジックや発想(アイデア)・ 視点(着眼点)、 写真・画像等も コピー・利用・流用することは禁止します。 剽窃厳禁。 悪質なキュレーション Curation 型剽窃、 つまみ食い剽窃もお断り。 複製のみならず、 ベース下敷きにし、語尾や文体などを変えた剽窃、 リライト、 切り刻んで翻案等も著作権侵害です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jan 1, 2024 04:29:52 PM
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