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クリームな日々

クリームな日々

畠山さんのメルマガ、6

Vol.006
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            そこそこ週刊・畠山理仁

     「浜岡原発停止要請」でかすんだ「チェルノブイリ超え」

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●魔法を使えない方の「ヨウセイ」
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 みんな浮かれている。菅さんも浮かれている。

「浜岡原子力発電所のすべての原子炉の運転停止を中部電力に対して要請した」

 5月6日19時過ぎ。菅直人内閣総理大臣が首相官邸で緊急記者会見を開き、
記者クラブの記者たちに向かってそう発表したからだ。

 これが大きな決断であることは間違いない。しかし、この要請を中部電力が
無条件で受け入れるかどうかはまだ正式には決まっていない。中部電力の原発
発電量は全体の10.6%(2009年実績)に過ぎないとはいえ、政府の「要請」
には何の法的根拠もないからだ。

 中部電力は同日、同社HP上に「浜岡原子力発電所の運転停止要請に関する
コメント」とする水野明久社長名での文書を掲載した。

「経済産業大臣より、本日19時に、浜岡原子力発電所の運転停止に関する要
請を受けました。当社としては、要請内容について迅速に検討いたします。以
上」

 つまり、今もまだ浜岡原発は稼働中だ。

 中部電力が要請を受け入れて原子炉を止めたとしても、すぐに菅総理の言う
「安全・安心」が確保できるわけではない。原子炉を冷温停止状態(100度以
下。運転時は300度近い温度)に持っていくまでには、ある程度の時間がかか
る。さらに言えば、冷温停止状態に入ったとしても、燃料は常に熱を出す。そ
のため炉内に冷却水を送り続け、原子炉を安定した状態に保たなければならな
い。万が一、原子炉を廃炉にするとしても、汚染物質の除去など、すべての処
置が完了するまでには10年以上かかるとみられている。

 つまり、いきなり「安心・安全な原発」が出現する手品など、どこにもない
のだ。菅総理の「要請」は、妖精が使う魔法の言葉でもない。実際には、まだ
何も始まってはいないのだ。

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●日本は原発から即時撤退できない
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 活断層の上に立地する浜岡原発の危険性はずっと指摘されていた。菅総理も
記者会見で言及していたが、文部科学省地震調査研究推進本部の評価では、今後
30年以内にマグニチュード8程度の東海地震が発生する可能性は87%と指摘
されている。

 それでもなお浜岡原発が稼動し続けたのは、中部電力が「東海地震クラスの
揺れが来ても安全性に問題がない」とし、国もそれを認めてきたからだ。

 今回の菅総理の発言によって、日本が脱原発に踏み出したと考えるのも間違
いだ。

 原発事故からちょうど一か月の節目だった4月11日。テレビ東京『WBS』
に東京電力の藤本孝副社長が出演した際にも、東京電力のエネルギー計画は
2019年で約半分近くが原子力発電所となっていた。

 また、共同通信は6日付で、経済産業省がまもなく発表する予定だった「今
後のエネルギー政策」に関する内部文書の中身を報じている。

【経産省、原発重視の方針堅持へ 安全宣言で電力確保目指す/47NEWS】
http://www.47news.jp/CN/201105/CN2011050601000827.html

 記事によると『原発の緊急安全対策を進めて「安全宣言」を早期に行うこと
で既設の原発からの電力供給を確保し、2030~50年には「世界最高レベ
ルの安全性に支えられた原子力」を3本柱の一つとする』ことが記されていた
という。

 日本は海外にも原子力発電所を売り込んでいるため、すでに原子力発電所か
らの撤退など考えられない状態になっているのだ。

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●フリーランスを排除しての緊急会見
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 5月6日の菅直人内閣総理大臣記者会見に参加できたのは、基本的には記者
クラブの記者だけだ。日本インターネット報道協会の代表カメラとして「ニコ
ニコ生放送」でも中継されてはいたものの、フリーランスの記者は記者会見の
場から排除されている。

 実は会見に先立つ5月2日、官邸報道室から筆者の携帯電話には一本の電話
がかかってきていた。

官邸報道室「近々、菅直人総理の記者会見が開かれます。会見の時期は未定で
すが、5月6日の10時~18時の間、参加登録を受け付けます。会見の時間が決
まり次第お知らせいたします」

 筆者はいつものように官邸報道室宛に申請書をファクスし、6日の19時すぎ
には自宅で夕食を食べていた。

 何気なくテレビをつけると、NHKの画面には首相官邸の会見室に立つ菅直
人総理の姿が映っていた。しかも画面の右上をよく見ると、なんと「中継」と
書いてあるではないか!?

「えええ~っ!?」

 最初は何が起こったのかわからなかった。事態を飲み込むために何度もカレ
ンダーと首相官邸のホームページを見比べてみた。

 なんのことはない。菅総理はフリーランスの記者を排除したまま、いきなり
記者会見をはじめていたのだ。

 筆者はすぐに首相官邸報道室に電話した。

   *
畠山「今、菅総理の記者会見をやっていますが、会見参加の事前登録をしたの
に何も連絡がなかった。今日やっている会見とは別ということなのか」
官邸報道室「そうですね。今日のは突発的に決まったので募集はしておらず、
本日の18時まで募集をしていたのは来週の分です」
畠山「来週の分? 今日の会見には参加できないんですか」
官邸報道室「とくには募集をしておりませんので。(参加しているのは)永田
クラブのメンバー。いつもの会見のメンバーです」
畠山「なんでフリーは入れないんですか」
官邸報道室「少々お待ち下さい(保留音の後、別の人が出た)」
畠山「今日の会見はなぜフリーの記者は入れないのですか」
官邸報道室「あのですね、急遽決まったものですから、普段の手順が踏めない
ということでですね、ちょっと今回はご連絡できなかったという。ちょっと入
る手続きというのが間に合わなかったと、そういうことなんですよ」
畠山「間に合わなかった?」
官邸報道室「はい」
畠山「いつ決まったんですか」
官邸報道室「これ、一時間ぐらい前ですね。我々のところに急に連絡が降りて
きたのが。それでバタバタ準備等やっているとなかなかお電話での対応をやる
わけにもいかないもんですから、ちょっとそれで、なかなかお話ができなかっ
た。いわゆる準備がちょっとできないっていうんですかね、お知らせというか。
それでちょっと今回はそのままドーンと行ってしまったという感じなんですけ
れども」
畠山「来週の会見とは別なんですよね」
官邸報道室「別なんですよ。急遽、なんか、割り込んで入ってきてですね、我
々もバタバタ慌てながらやっていたというのが舞台裏の話なんです」
畠山「来週の会見の時間は決まっていないんですか」
官邸報道室「まだちょっと時間は決まっていないのでまた改めてご連絡させて
いただきます」
畠山「これ、今日やったから来週やらないっていうことは?」
官邸報道室「それはないです」
   *

 なんじゃそりゃ。

 いままで再三、浜岡原発の危険性を指摘されておきながら(しかも文科省の
研究機関という税金を使った調査でも)、ずるずると今日まで決断を伸ばして
きたのではなかったのか。

 なぜフリーランスの記者を排除して緊急会見をする必要があったのか。来週
に発表すればいいだけではないのか。

 ちなみにこの週末には全国で大規模な反原発デモが予定されている。反原発
デモの後からの「浜岡原発停止要請」ではカッコ悪いと思ったのか。

 会見に参加させない、質問の機会を与えないということは、こういう質問に
は答えたくないのだと判断されてもしかたがない。

 せっかくだから菅総理が答えたくない質問を列挙して、「菅総理は答えなか
った」という「エア記者会見録」でも作ってしまおうかという気持ちになる。

 そもそも菅総理は「フリーランスの記者の質問になど答える義務はない」と
思っているのかもしれない。

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●法的根拠もない「要請」が「チェルノブイリ超え」をかすませる
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 実はこの日、福島原発事故対策統合本部の会見では極めて重要な発表が行な
われていた。それは文部科学省及び米国エネルギー省航空機による航空機モニ
タリングの結果発表だ。

 測定実施日は4月6日~29日。福島第一原子力発電所から80kmの範囲内に
おいて、地表面から1mの高さの空間線量率、及び地表面への放射性物質の蓄
積状況を確認したものとなっている。

 この測定結果は文部科学省のホームページから探そうとすると目立たないと
ころに掲載されているので、リンクを貼っておく。

【文部科学省のホームページ内「文部科学省及び米国エネルギー省航空機によ
る航空機モニタリングの測定結果[平成23年5月6日](PDF:1570KB)」】
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/
afieldfile/2011/05/06/1305820_20110506.pdf

 公表された資料中の地図(別紙2)を見ると、もっとも放射性物質濃度が高
い赤の部分は、放射性セシウム(セシウム134=半減期2年、セシウム137=
半減期30年)が1平方メートルあたり300万~3000万ベクレルの地域。
 セシウム137だけの地図(別紙4)を見ても、赤い部分は300万~1470万
ベクレルの地域となっている。
 しかもこの赤い部分は原発から北西に30km以上離れた浪江町、飯舘村地域
にも広がっている。

 思い出してほしい。チェルノブイリではセシウム137が1平方メートルあたり
55.5万ベクレル以上の地域が強制移住の対象となっていた。つまり、この測
定結果が正しければ、チェルノブイリの強制移住地域をはるかに超える量の放
射性物質が蓄積されている地域が存在することになるのだ。

 しかも、その地域には今でも人が住み続けている。

 5月6日の菅総理会見では、質問は記者クラブの2問に限られた(会見内容は
【特別付録】として最後に掲載)。

 もし6日の会見に私が参加していたならば、私はその時点でまだ何も変化が
起きていない「浜岡原発停止要請」ではなく、実際に放射性物質の蓄積量が
「チェルノブイリ超え」をしていることについて質問をしていたはずだ。

 おそらくそれは菅総理にとって好ましくない行為だ。たぶん手を挙げても当
ててもらえない。しかし、会見の場で手を挙げるという最低限の機会まで奪う
のはひどすぎる。

 パフォーマンスをするなら、カイワレを食べるかのようにプルトニウムを飲
むとか、もっとうまくやってほしい。

 安心・安全のために原発を2、3年止めるように要請するのもいいだろう。

 しかし、今もなお「チェルノブイリ超え」の地域に住む人々がいるという現
実を忘れてはいけない。

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              【特別付録】
【2011年5月6日・菅直人総理大臣記者(フリーランス除く)会見・全文】
(会見に入れなかったので政府インターネットテレビを録音して文字おこし)
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●菅直人内閣総理大臣:
 国民の皆さまに重要なお知らせがあります。本日、私は内閣総理大臣として、
海江田経済産業大臣を通じて、浜岡原子力発電所のすべての原子炉の運転停止
を中部電力に対して要請をいたしました。
 その理由は、なんといっても、国民の皆様の安全と安心を考えてのことであ
ります。同時に、この浜岡原発で重大な事故が発生した場合には、日本社会全
体に及ぶ甚大な影響も合わせて考慮した結果であります。
 文部科学省の地震調査研究推進本部の評価によれば、これから30年以内に
マグニチュード8程度の想定東海地震が発生する可能性は87%と極めて切迫
をしております。
 こうした浜岡原子力発電所の置かれた特別な状況を考慮するならば、想定さ
れる東海地震に十分耐えられるよう、防潮堤の設置など、中長期の対策を確実
に実施することが必要です。
 国民の安全と安心を守るためには、こうした中長期対策が完成するまでの間、
現在、定期検査中で停止中の3号機のみならず、運転中のものも含めて、すべ
ての原子炉の運転を停止すべきと私は判断をいたしました。
 浜岡原発では従来から活断層の上に立地する危険性などが指摘をされてきま
したが、先の震災とそれに伴う原子力事故に直面をして、私自身、浜岡原発の
安全性について、様々な意見を聞いてまいりました。
 そのなかで、海江田経済産業大臣と共に熟慮を重ねた上で、内閣総理大臣と
して本日の決定をいたした次第であります。
 浜岡原子力発電所が運転停止をしたときに、中部電力管内の電力需給バラン
スが大きな支障が生じないように政府としても最大限の対策を講じてまいりま
す。
 電力不足のリスクは、この地域の住民の皆様をはじめとする、全国民の皆様
がより一層、省電力、省エネルギー、この工夫をしていただけることで、必ず
乗り越えていけると、私は確信をいたしております。
 国民の皆様のご理解とご協力を心からお願いを申し上げます。

●司会(千代幹也内閣広報官):
それでは質問を二問お受けします。山口さん、どうぞ。

●NHK山口記者:
 NHKの山口です。安全性の観点から止めるということですけれども、中部
電力はこれまで東海地震並の揺れが起きても安全性に問題はないとしてきて、
まあ、国も容認してきたわけですけれども、なぜこの期に至って突然、浜岡原
発だけなのかというのが一つ解せないことと、もう一つ、この夏場を迎えてこ
れを全部止めるということになると、夏場の電力量よりも下回ってしまうと思
うんですが、供給量が。その対策は具体的にどのようにお考えになっています
か。

●菅総理:
 ただいま申し上げましたように、浜岡原子力発電所が所在する地域を震源と
する想定される東海地震が、この30年以内にM8程度で発生する。そいうい
う可能性が87%と文科省関係機関から示されております。そういう浜岡原発
にとって特有といいますか、その事情を勘案をして、国民の安全安心を考えた
結果の判断、決断であります。
 また電力不足についてのご質問でありますけれども、私はこれまでの予定の
中で言えば多少の不足が生じる可能性がありますけれども、この地域をはじめ
とする全国民の皆さまの理解と協力があれば、そうした夏場の電力需要に対し
て、十分対応ができる、そういう形がとりうると、このように考えているとこ
ろであります。

●司会:
それではもう一方。坂尻さんどうぞ。

●朝日新聞坂尻記者:
 朝日新聞の坂尻です。今総理がなされた浜岡原発への停止要請なんですけれ
ども、これはどういった法律のどういう根拠に基づく要請であるのかという点
と、もしそういう法的な担保がない場合は、ことと、中部電力が我が断ってき
た場合、総理はどのようにされるおつもりなんでしょうか。

●菅総理:
 この要請に関して後ほど海江田経済産業大臣から詳しくご報告をさせていた
だきますけれども、基本的には、この、私が申し上げたのは中部電力に対する
要請であります。法律的にいろいろな規定はありますけれども、指示とか命令
という形は現在の法律制度では決まっておりません。そういった意味で要請を
させていただいたということであります。
 もう一点はなんでしたっけ。

●朝日新聞坂尻記者:
 中電側が断ってきた場合、総理はどのようにされるおつもりなのか。

●菅総理:
 ここは十分にご理解をいただけるように、説得をしてまいりたい。このよう
に考えております。

●司会:
それではこれで総理記者会見を終わります。どうもありがとうございました。

以上

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◆発行元 : 畠山理仁(はたけやまみちよし)
◆Blog : http://hatakezo.jugem.jp/
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