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カテゴリ:男と女の世迷い言(創作)
☆☆ これは、『創作』のカテゴリーです。「成田山詣」から始まる続きものです。ある男とある女、ある男に食らいついて離れないおばちゃん、その他の絡みあい。ドロドロしたお話しです。
中古マンションのチラシを見せて、ウィニーがラブリーに聞いた。 「ラブリ、この間取りってどうだろね?」 冷えたビールを渡しながらチラシを受け取り、イスに座ってじっくりチラシを見る。 「あら、住みやすそうな間取りね。」 3LDKだが格安だ。 しかもリビングと主寝室がやたら広い。 「値段も手頃だな。これって、どのあたりだろ。」 「ここより東京寄りよ。なんで?」 「どの辺なのか、一度行ってみたいんだけど。」 「歩いては無理よ。チャリなら…そうね、15分ってとこかな。」 「バスでも行ける?ラブリ、自転車に乗せたくないし。」 「行けるはずよ。この辺はね、どっちの駅で降りてもバスを使わなきゃダメなの。バスかチャリね。だから安いんじゃない?」 「そっかあ…電車の駅から遠いんだね。でもそれを言うなら、ここもそうだし、俺の部屋もそうだもんなあ。」と、ウィニーはまたチラシを食い入るように見始めた。 「ひえ~、管理費、高ッ!」 「アパートじゃないんだもの。マンションでしょ?それに維持費だってかかるわよ、古いんだから。」 「そっかぁ…」 ブツブツと口の中で計算を始めるウィニー。 「ラブリ、一休みしたら、行ってみたいんだけど…?」 「いいわよ。明日も休みなんでしょ?じゃあ、夕飯は外ね。」 「うん、ここへ行って、夕飯は外食にしよう。できたら、お子達も一緒に。」 ウィニーはまだチラシを見ている。 「でもどうして?なんでそんなに気になるの?」 チラシから目を上げて、ラブリーをまっすぐ見て言った。 「家、買わない?子供もできたしサ。一軒家じゃなくてゴメンだけど。マンション、それも中古でゴメンだけど。」 びっくり! 「え?」 テーブルをはさんで、ラブリーのきょとん顔とウィニーの真面目顔が見つめ合った。 「思ったんだよ。俺達の年齢でさ、子供ができてさ、アパートで育てていいのかな、って。そしたらラブリのお子だっているし、一家4人になるわけだし…どっちみちここじゃあ狭すぎるっしょ。最低限、もっと広いとこに引っ越さなきゃ。」 ラブリがだんだん泣き顔になってきた。 「一緒に暮らしてくれるの?一緒にいてくれるの?」 「だって、俺達2人の子供ができたんだよ。両親が一緒に住んでいなくてどうすんの?子供に良くありません。それに俺達、ずっと一緒にいようって約束したじゃないか。」 ラブリが瞬きをしたら、目から涙がポロッと落ちた。 「ラブリはいやですかい?」 「いやじゃない!いやじゃない!うれしい。そうして欲しい。でも…でも、あの人はどうするの?おとなしく帰ってくれるの?いなくなってくれるの?」 今度はウィニーが泣き顔になる。 「わからない…」 「でしょ?」 「わからないけどさ…、すぐには帰らないかも知れないけど…でも帰ってもらわなきゃ…ね。」 ああ、またこれだ。 自分からは話しを切り出せない人。 「みんなにとっていい人」なんて有り得ない。 「みんなにとっていい人」というのは、結局、「みんなに対して嘘つき」ってことだ。 そのつどなにかしらの言い訳をしながら「もう少し、もう少し」と時間稼ぎする。 「暖かくなったら」と言っていたのに「暑いから、もう少し涼しくなったら」になり、そのうち「寒いから」と一年は巡る。 「お母さんが死んでかわいそうだから別れ話はできない」と言って、あれからどれだけ経った? 巷では、そんな言い訳でごまかされているラブリーのほうがかわいそうだと言われている。 その一件で、それまでどの店の女の子達からも「いい人」と言われていたウィニーの評判はがた落ちになってきた。 いまだにウィニーに営業電話をしてくる女の子は、もうウィニーにたかろうとしか思っていない子達だ。 「最近、俺達一緒にいる時、メールとか電話とかないでしょ?わかってるんだよ。意地になってるんじゃないかなあ。もう少しだよ。」 意地になってる人があきらめるわけないでしょ! なに呑気なこと言ってんの、この人は!と、ラブリーは腹の中が煮え繰り返る思いだった。 あぁ、胎教に良くない! [つづく] お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013年06月17日 03時11分58秒
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