へこむセラミックス
アワビをヒントに 東大など開発 陶器やガラスなどに代表されるセラミックスを特殊加工すると、力を加えた際に表面が金属のようにへこむことが、物質・材料研究機構と東京大学先端科学技術研究センターの香川豊教授(材料工学)らの研究でわかった。セラミックスは一定以上の力が加わると割れるのが常識だが、2種類の成分を微細な層状に重ねると金属のような柔軟性を示すようだ。割れにくい新材料の開発につながる可能性がある。 セラミックスは、一般に金属より軽くて耐熱性があり、産業用では航空機部品や発電用タービンの表面を保護する材料などに幅広く使われている。強度は高いものの、いったん傷付くと、すぐに割れたり、もろくなったりする弱点もある。 香川教授らは、複数の材料を組み合わせるなどして、これまでにない特徴をもった新素材の開発を進めていた。その一環で、硬くて独特の輝きをもつアワビの貝殻の成分に注目。電子顕微鏡による分析で、内側成分の表面に厚さ500ナノメートル(ナノは10億分の1)ほどの微細な層状構造があることに気付いた。 セラミックスであるアルミの酸化物とチタンの酸化物を、厚さ60~80ナノメートル間隔で交互に10層ずつ積み重ねて貝殻に似せたところ、強い力を加えると室温でぐにゃりと変形した。へこむと元に戻らなかった。 金属が変形するのは、力が加わった際に個々の原子の位置がずれるからとされる。だが、セラミックスの変形の仕組みはまだわかっていない。 香川教授は「詳しい原理を解明すれば、割れにくく、より丈夫なセラミックスが作れるかもしれない」という。(2007年06月11日15時23分『asahi.com』)[PR] 株式投資