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カテゴリ:小説 みるくの物語
6 果てしない・・・大空と みるくは、オーラル・リンドウが、分け与えてくれる蜜を・・母親の香りを・・・母親の思い出を口に・・・運んでいくのでした・・・。 勇気が湧いてきました!希望が!知恵が!思い出が!笑顔が!・・・蜜を舐めるたびに・・・一つ・・・また一つ! 何故だか解らない・・・熱いものが!! 込み上げてきます!! 母親ジーラの思い出でしょうか・・・? それとも母親を殺されたギラン族への復讐でしょうか・・・? 違います・・・。 何かが違うのです!! 勇気百倍!! もう泣き虫の、みるくではありません!! その時でした!! 「用意はできたかい?みるく。」あのおばあさんが、再び立っていました! 「うん!!大丈夫だよ!!」みるくは、はじめて笑顔で答えました。 「おばあさんの名前を教えてください。」みるくが、おばあさんに聞き返すと・・・。 「おやおや・・・ただの泣き虫お嬢様だと思っていたのにね・・・まるでジーラみたいになっちまったよ。」ほほほ。 「あたしはね・・・ミラノっていうのさ・・・おわかり?お嬢さん。」ほほほ・・・うれしそうな、おばあさん。 笑顔で初めて会話が出来たのでした。 「さあ!!行くよ!!しっかり捕まっていなさいな・・・おっと!!オーラル・リンドウを離してはいけないよ。」 そう言って、おばあさんは、みるくをしっかり抱きかかえて大空に羽ばたいて行きました・・・。 どれほど長い時間がたったのでしょうか・・・。 どれほどの道のりを越えてきたのでしょうか・・・。 みるくは、母親の顔を思い浮かべながら、ただ、ただ、ミラノおばあさんに掴まって着いていきました。 7 心の雄叫び 母親の香りのする、オーラルリンドウを見つめていた、みるく。 「さあ着いたよ」ミラノおばあさんが着地と同時にみるくに言いました。 「ここは・・・」みるくが、辺りを見渡しながらつぶやきます。 みるくの目に見えるもの・・・山と湖・・・他には何も見えてきません。 「おばあさん・・・」みるくが、そういうと・・・。 「バッチン!!バチン!!」という音とともに沢山の人たちの姿が現れて来たのです。 「ミラノや、この子が・・・ジーラの娘なのかい・・?」年老いたお爺さんが、なにやらミラノおばあさんと話をしています。 「ジーラに目元なんか、そっくりだろう・・・」そういってミラノおばあさんが、みるくをみつめました。 「みるく紹介するよ、ここに集まったみんなが、ジーラの仲間さ!!」ミラノおばあさんが語ります。 「マミーの・・・お友達・・・!?」みるくが、つぶやきます。 「さて、みるく・・・ジーラの娘だというからには、これからの戦いに参加してもらうよ、心してお聞き・・・。」お爺さんが語り掛けました。 おじいさんの名前は、ピラクルだという名前であること。そしてジーラの父親と友達であったこと。 ギラン族が攻めてきたときにジーラが連れ去られたこと。 これからギラン族を滅ぼして、平和なオーラル族の世界に戻すこと。 ギラン族を滅ぼすにあたって、ギラン族の周りの動物達をオーラル族の元へ移送させる計画など・・・。 みるくに、語っていきます。 「・・・」みるくは静かに聞いていました。 ピラクル爺さんの話が終わる頃・・・。 「私、やります・・・争いのない平和なオーラル族のために・・・私・・・やります。」みるくが笑顔で答えたのでした。 8 決行と団結 時同じくして・・・一方ギラン族の方は・・・。 「オーラル族の生き残りが居るらしいわよ・・・。」 「オーラル族がギラン様を連れ去ったのを見た人が居るらしいわよ・・・。」 「オーラル族・・・?知らないなー・・・?なんだそれ??」 「大丈夫よー。ギラン様がいらっしゃる限りこの国は安泰なのよ・・・。」 様々な噂で日々過ごすギラン王国のギラン族たち・・・。 何も変わらない、何も変えようとしない、何も変わって欲しくない・・・、そんなギランのコウモリ族であった。 さて、オーラル族はというと・・・。 「みるく・・・今夜決行よ!!準備はできて・・・?」ミラノおばあさんが、みるくに語りかけていた。 「大丈夫よ、おばさま・・・。」体の震えを抑えきれずに、みるくは答えた。 「みるく・・・私の蜜を、お舐めなさい・・・。」優しく語りかけるオーラル・リンドウ。 「今宵の空は・・・明るすぎるのう・・・。」心配げに、ピラクル爺さん。 「ダメよピラクルさん弱気になっちゃ!さあ!みるく私は他の仲間達と打ち合わせに行って来るからね。 私が帰るまでに心の整理をしておきなさい。そうそう、お食事もね。」そういって、ミラノおばあさんは他の仲間達のところへ 向かいました。 「今夜いよいよ決行よ!!前もって準備していたとおり・・・あの洞窟へギラン族の動物達を誘導するのよ!! 見つかっても、ひるんじゃダメよ!!戦うのよ!!動物達のためにも私達のためにも!!これ以上ギラン族の犠牲にさせておくものですか!!」 「そうだそうだ!!俺達の未来を取り戻すんだ!!」 「おー!!」みんなの心が一つになる瞬間でした。 9 生と死と空白と さあ夕暮れにさしかかる頃・・・。 決行での時間がついにきました・・・。 「みるく起きなさい!!」 「ハッ!!」飛び起きたみるく。 「さあ行くわよ!!」ミラノおばあさんが先頭にたちました。いざ行かんギラン王国へ・・・。 ギラン族の中心地に到着したオーラル族・・・。 静かに静かに動物達をオーラル族の洞窟へと誘導していきます・・・。 「だいたい終わりかしらね・・・?」 「無事に皆帰ってこれるかしら・・・。」ミラノおばあさんが不安そうに洞窟の前で仲間達が連れてくる 動物達を見ながらつぶやいています。 「ミラノ!!見つかってしまった!!ギラン族が攻めてくるぞ!!」誰かが走ってきました!! 「え!!見つかっちまったかい!?」ミラノの不安が的中しました。 「動物達はこれで最後かい?みるくを見たかい?」 「みるくが連れている動物達が最後のはずなんじゃが・・・。」 「まだ向こうに居るのかい・・・。」 「助けに行かなくっちゃ!!」 「ミラノさん・・・もう間に合わないよ!!」 「早く洞窟の扉を閉めなければ我々皆がやられるぞ!!」 「何を!!おっしゃって!!目を覚ましなさい!!オーラル族は最後まで戦うのよ!!子供達の未来のために!!」 そういってミラノおばあさんは向こうへギラン族に向かって飛び立ちました。 「そうだった!!皆手の空いたものは、みるくを助けに行くぞ!!」 またオーラルの仲間達も、ミラノのあとを追いかけました。 「みるくは?・・・みるく!・・・みるく!!」 「あ!みるく!!今行くよ!!」 みるくはギラン族に囲まれていました。動物達も囲まれています。 「よくもよくも!我々の食事に手を付けてくれたな!!」 「お前からいただくとするか・・・。」 今にもみるくが餌食にされようとしています。 「マミー・・・助けて!!・・・。」みるくは動物達を抱きかかえて叫びました! その時でした! 「みるく!!早く動物達を連れてお行き!!」ミラノおばあさんがギラン族とみるくの間に 割って入ってきました。 他のオーラル族の仲間達もやってきました! 「みるく!!」 乱闘の最中、どちらが見方なのか・・・わかりません。 必死に動物達を誘導するみるく。 必死にみるくたちを守るオーラル族。 動物達を取り返そうとするギラン族。 みるくは、やっとのことで洞窟に到着できました。 しかし、ギラン族もすぐそこまで追ってきています! 「早く閉めて!!」みるくに他のオーラル族が言い放ちます! 「でも!でも!ミラノおば様たちが、まだ来てないの!!」みるくは躊躇しています。 [バーン!!」扉を閉めたのはピラクル爺さんでした。 「ドーン!!」扉の外で大きな音がして大きな岩が扉を塞いだのでした。 10 勝利の果てに・・・。 外で何が起こっているのか・・・。 みるくには解りません・・・。解っているのは、ミラノおばあさんと他の仲間達がこの洞窟へ到着できなかったことだけです。 「ミラノおばさん帰ってきて・・・お願い・・・。」みるくの目に涙が溢れてきました。 あの戦いから7日7晩が経ちました。 そして、8日目を迎える朝・・・。 「皆よく戦ってくれたの・・・。本当によく戦ってくれた・・・。」ピラクル爺さんが立ち上がって声を大にしました。 「オーラル族は、これにて、これより栄えることが出来るのじゃ、平等な争いのない、昔のように・・・。 皆で支えあって、助けあって、そして・・・今また平和が訪れたのじゃ・・・。」 「先駆者達の冥福を祈り、我々の胸に刻み、日々過ごそうではないか・・・。」 「平和への一念こそ・・・忘れることなかれ。」 「何ものにも恐れない、真の勇者となろうではないか。」 「この場所へ帰って来る事の出来なかった者の分まで幸せになろうではないか・・・それが生きているものの務めなのだ・・・。 精一杯これからの平和を守ろうではないか・・・。」 「いがみ合うことなく、争うことなく・・・じゃ。」ピラクル爺さんの目には、大きな涙が一滴こぼれている・・・。 みるくは、静かに聴いていた。 「私・・・もう泣かないよ、マミーや、ミラノおばさんの分も幸せになってみせるよ・・・。」 「ね・・・オーラル・リンドウさん・・・。」 こうして、吸血コウモリ族は永久に姿を見せなくなりました。 現在、世の中にいるコウモリ族は皆、心の優しいオーラル族だけと なったのです。 おしまい。 著作 by おおとみ ひさし お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.03.20 20:01:13
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