歴史の研究1
人間の経験というのは本当に面白いものです。バブルバースト後に成人した世代はあのバブルの事を知らないのです。次の世代は同じ過ちを繰返すと言われていますが、こういう現実を目にするとさもありなんと思えてきます。バブルの時、サラリーマンのモラールが失われたわけですが、この原因の一つは商店街の八百屋・魚屋が借地権を3億円で売って買い替え特例で世田谷等の高級住宅地に引っ越したからです。そう3億円、一流企業に40年勤めあげた時の生涯賃金が一夜にして生まれたのです。こんな例を目にしてサラリーマンがまじめにやってられるかと思ったのは当然です。さて、3億円の不動産を仲介した不動産屋にいくらの手数料が入るでしょうか。3%で900万円です。一件扱って900万円笑いが止まりません、そして、皆が上がる前に買おうと焦るものだからどんどん売れました。厚木あたりでも不動産屋の若造がBMWの5シリーズを営業車の白いカローラのように使っていたものです。それまで都内で700万円で分譲されたワンルームマンションもまたたくま間に3,500万円になりました。NHKのバブル特集で不動産屋の親爺が言った言葉を覚えています。『不動産は金融商品です。』その後、都内の地価が上がり過ぎて投資マンションは郊外に出て行きます。結局首都圏は厚木まで、そして博多をはじめとした地方都市まで広がりました。この時、厚木で2,000万円、小さな地方都市で1,500万円程度でした。信じられないでしょうが、一戸建ては新宿へ50分と言って厚木で1億円まで行きました。世田谷など2億円、3億円なんてしたものです。最近、転職の為に世田谷の自宅を手放した知人が当時郵便受けに入っていた2億円で売りませんかというチラシを真剣に検討していたら良かったなあと半分冗談で言っていましたが、あの時売った人は億万長者になりました。数年前埼玉の畑から1億円入ったクーラーボックスが出てきて話題になりましたが、土地を売った埼玉の農家には数十億円のお金が転がり込んだという話です。今から思うと、ワンルームマンションを購入するという事はとても投資と呼べるしろものではありませんでした。正に値上がり益を目的とした金融商品で、真っ赤の収益の代償として税の還付が付いていました。そして、1991年マルコーの破綻でマンション投資は終焉をむかえます。ただ、地価が再び上昇するのではないかという皆の期待が有り価格自体は1/2になった後1998年の銀行の破綻まで続きました。しかし、結局銀行の破綻~不良債権の処理となり、価格は更にじりじり下げて現在に至っているのです。現在の価格はだいたいピークの1/3~1/5です。出遅れて指をくわえて見ていた青年だった私はマルコーの米国不動産ではまりました。ただ、損失額からすると米国の不動産を失った人も国内で自宅を買った人もキャピタルロスは賃金に比較すると途方も無く大きなものになりました。この時自宅を買った人も皆数千万円のキャピタルロスを抱え込んだのです。これだけのキャピタルロスを背負い込んでどうして明朗でいれるでしょうか。これが、今日の日本社会の根暗の主犯格と言うところでしょうか。正直、競売を見つけてキャピタルロスを減らす事ができると気付いた時の私の嬉しかった事、最後に背中の十字架がなくなった時本当に肩の荷が降りたと安堵したものです。若い皆さんはこういう話を聞いても実感がわかないでしょう。私も正直ここまで下がらなくても良いんじゃあないのと思うのです。何度も言っていますが西洋社会はバブルの時の日本に相当する価格まで上がっているのです。この不均衡は非常に理解に苦しむところです。その上、日本はこれで下げ止まったわけではないのです、更に下がると言われているのです。価格は需給バランスで決まりますから、現金がほしくて売りたい高齢者、キャピタルロスが有って買えない中年、将来の事を考えた事も無いぬるま湯の青年という図式が成立しているのだと思います。当分この図式は変わりそうにありません。おそらく、後20年して歴史を知る当事者のほとんどがあの世に行った時、もはやバブル後ではないと宣言されるはずです。そして、今度は経済2流国としてハイパーインフレの洗礼を受けるに違い有りません。それに比べれば、現在はまだ良かったなあと懐かしまれる過去の1ページなのかもしれません。