SKF「ファルスタッフ」クイン・ケルシー
まつもと市民芸術館・主ホール料金: SS¥30,000 S¥26,000 A¥22,000 B¥18,000 C¥10,000出演:サー・ジョン・ファルスタッフ:クイン・ケルシー フォード:マッシモ・カヴァレッティ フェントン:パオロ・ファナーレ* アリーチェ・フォード:マイテ・アルベローラ ナンネッタ:モーリーン・マッケイ クイックリー夫人:ジェーン・ヘンシェル メグ・ページ:ジェイミー・バートン バルドルフォ:キース・ジェイムソン ピストーラ:デイヴィッド・ソアー ドクター・カイウス:ラウール・ヒメネズ合唱:SKF松本合唱団演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ指揮:ファビオ・ルイージ演出:デイヴィッド・ニース装置・衣裳:ロバート・ペルジオーラ照明:リック・フィッシャー歌劇「ファルスタッフ」(初演は1893年2月・ミラノ)作曲中のヴェルディ(89年当時76歳)が歌詞作家ボイートに書き送った手紙の一部です。老ヴェルディが浮き浮きしながら作曲のペンを取っている様子が伺われます。歌劇「ファルスタッフ」第3幕フィナーレをブッフォ・フーガ「 すべてこの世は冗談」の全員の合唱で締めるアイデアはヴェルディが案出したもので、ヴェルディは自分のアイデアがとても気に入っていたようです。 *左は最晩年のヴェルディが書き残したメモ:フーガ・すべてこの世は冗談・ヴェルディ『すべてこの世は冗談。人は道化の生まれつき、いつだって頭のなかでは理屈をこねる。誰もかれもが道化なんだ!そしておたがい、あざけり笑いあう。でも、最後に笑う者こそ、本当に笑っているんだ。』(歌劇「ファルスタッフ」の幕切れの合唱)第1幕終了、主役クイン・ケルシーの声がいまいち、艶がない。第2幕終了。フォード:マッシモ・カヴァレッティは美声。ところで、此のオペラ、「ウィンザーの陽気な女たち」と「ヘンリー4世」が原作とのことだがググって《ウィンザーの陽気な女房たち》ではとっちめられるばかりだが、活躍するのは別の作品《ヘンリー四世》のなかである。活躍と言っても、彼の場合はハル王子の悪友として様々な悪さをする一方、戦となると平気で虚言を弄して生き延びようとする。オペラの第1幕第1場でファルスタッフがのたまう「名誉とは?ただの言葉さ」のくだりは、台本を書いたボーイトが《ヘンリー四世》の方から取ってきた台詞だ。身体も楽天性も巨大で、意気地の方では小心者でもある、あらゆる意味で「幅の大きい」この憎めない騎士。舞台を圧するその豪快さは、多少のお仕置きを受けたくらいではへこまない圧倒的な生命力を発している。 ストーリーの枠組みである《ウィンザーの陽気な女房たち》は、シェイクスピアでは珍しい「同時代劇」だ。昔の歴史や遠い国の話ではなく、「今」を生きている市民たちが主役。現代にも通じる、等身大の人々が、それぞれの立場の隙間から本音を覗かせる。偉そうにしている割には疑心暗鬼に捕われてあたふたする男たち。彼らを立てつつも、機知と行動力で上回って実は尻に敷いている女たち。初々しい恋心のやり取り。今どきと変わらない人間模様だ。と知った。