カテゴリ:本の感想
本日、北方謙三の小説「波王の秋(とき) (集英社文庫)」を読み終えた。
舞台は、南北朝時代の九州以南の海。三度目の元寇を防ぐべく、男達が戦い、死んでゆく。 現在、文庫で順次刊行されている水滸伝 では、官軍と梁山泊との間で、水軍同士の戦いが繰り広げられている。この原型を、本書に見る思いがした。船の事は全く分からないが、描写が絶妙で、激しい海戦の様子が違和感なく伝わってくる。 ![]() 波王の秋(とき) この本で、日本が海に囲まれた国である事を改めて認識した。日頃から海域を犯す隣国に対する政府の腰の引けた姿勢にイラついている自分としては、本書に全く「日本」という国の政治が描かれていない事が、一種の皮肉であるかのように読み取れた。 主人公達は「日本を元に侵されないために」と何度も口にしている。しかし不思議な事に、日本の本州は全く触れられない。当然、当時の日本の政局についても、全く書かれていない。明らかにうがった見方だが、この本の主人公達は、現場で文字通り体を張っている、海上自衛官や海上保安官と同じではないか、などと読みながら思った。 ネタバレになるが、本書を読み終えて、主要な登場人物がわりと多く生き残っているのが、なんだか良かった。北方謙三は「成らなかった革命」を描く事が、多いように思う。それ自体魅力的なのは間違いないのだけど、やっぱり感情移入してしまった人物が死んでいくのは、悲しい。 今回も、良い本だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年02月02日 23時29分38秒
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