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カテゴリ:小説 お江戸酔生夢死
お江戸 酔生夢死 14 令和院時迷寺 あたい、迷夢幻覚、、 「おみつさん診てもらったほうがいいよ、脳味噌の中で這ってる蛞蝓取り除かなきゃだめよ、気が触れちゃうわよ、 永代橋渡ったところにある、令和院時迷寺っていう寺にいくといいわ、 心配しなくても大丈夫、霊感が彷徨ってるなんて怪しいことは言わないし、如何わしい占いじゃあないし、心の病の藪医者でもない、令和院時迷寺の流庵和尚というお人はね、おみつさんみたいに江戸に迷い込んできた人を救ってくれる人なんだ。 時に迷った人を救う寺なのよ、それで時迷寺つて言うの、案内するから行きましょう、 あ、あのね、何でも屋のお加代は只じゃ動けないのよ、 何でもやって言うのはな、困りごと何でも引き受けるの、頼まれれば殺しでもやるのよ、でもね、ちゃんとお銭は頂くの、あたしもおまんま食べないと生きていけないのよ、ほほほほほ、、、 おみつさんお銭(オアシ)もたっぷり持ってるようだし、案内(あない)料は100文よ、、、」 あたいは藁にでもすがる思い、江戸は好きだけど、あたいの見た景色が幻覚だとしたら不安は募るばかり、安心できるなら100文なんて鼻糞よ。 令和の時代からきたなんて言ったらそれこそ迷妄女にされ、奉行所に連れていかれて、 「江戸の町を混迷せんとする不届き者、許し難し!」なんて罪で島流しにでもされそうだもの。 お加代さんの案内で、令和院時迷寺へ向かう途中の道筋でも、あたいの目には永代橋では仕込み杖を持った座頭市がとぼとぼ歩いているのを見たし、深川佐賀町では、しとしとぴっちゃんしとぴっちゃんの子連れ狼、拝一刀が箱車を押し、大五郎が「ちゃん、、」と呼ぶ声も聞こえたのです、お加代さんは知らんぷりしてすたすたと前を歩いていく、 きっと見えていないんだわ、、なんだか可哀想だわ、せっかくの江戸なのに、、、 樫の木が鬱蒼と繁る令和院時迷寺の境内に入った。寺の後ろには墓石が雑然と並んでいた。 流庵和尚はおでこが異常に広く耳たぶが膨れている異様な形相だったが、喋り方は穏やかで、 あたいの目をじっと見つめてから頷くようにして口を開いた。 「おみつさんは 、酔生夢死という病かもしれぬ、おみつさん、相当な成口(酒飲み)じゃろう、多分、そのせいもあるな、、、、 愛惜した人を亡くすと、そのことを受け入れられずに、夢に出てくる、やがて現(現)の世で、忘れられぬ人を他人に映してしまう人がおるのじゃ、、 何かから逃げ出そうとしているのじゃが、それがなんだかわないから厄介なのだ。 江戸が好きで好きで堪らないというが、そもそもその気持ちがどこからきたのか、何かから逃げ出そうとするあまり、思いが強くなっているのではないかな、 江戸への思い入れが強すぎて引きずり込まれているのじゃな。 惚れた腫れたでは、痘痕(あばた)も靨(えくぼ)というじゃろう、。 だから、 現し世(うつしよ)に存在しない人物を錯覚してしまう、、迷夢じゃな、 迷夢幻覚じゃ、治す薬はない。 冷静沈着にもう一度江戸を見つめなおすことじゃ、 きれいな花には棘がある、物事には必ず汚い裏があるのじゃ、そしてそれをひっくるめた江戸の暮しに馴染むことじゃ、、、 いつでも、この寺に来ると言い、万事悩みは消えていくことでしょうよ、、、」 んんんん?あたい、旦那から逃げて江戸に迷い込んでるのかしら?、、 ひとり淋しく 酔って今夜も女の未練、お江戸の皆様 あなたに惚れたあたいを捨てないで つづく 深田みつ ~あたし夢死病だってさ~ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022年06月04日 10時30分09秒
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