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ネット文芸館 木洩れ日の里

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2025.05.11
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カテゴリ:遊歩つれづれ

  朱色に染まった雲が昭和のわっぱにいたずら書きされたように茜色が乱れ、すぐにも夕闇の中に消え入りそうにしていた。懐かしい空色に誘われて、昭和の扉をこじあけてセピア色の町へふ~らふらと歩き出した。角の煙草屋の艶やかなおばさんは町内の人気者だった。公衆電話の中ではお姉さんが笑っていた。駄菓子屋の前では半ズボンの鼻ったれ小僧がうまい棒を食いながらくじ引き菓子の前で真剣な顔をしている、広場では紙芝居のおじさんが演じていて、マンホールのある広場では石けりやメンコ、ビー玉で遊ぶ子供らの可愛い声が飛び交っていた。

 商店街では、パチンコ屋の宣伝のチンドン屋が派手な衣装で鉦(かね)太鼓ラッパで<竹に雀>を演奏しながら練り歩いていて、その周りを子供らが金魚の糞のようについて回る。豆腐屋、八百屋、魚屋、総菜屋、乾物屋、食堂、鮨屋、新聞屋、自転車屋、米屋、雑貨屋、郵便局などが並び、買い物をするおばさんが煩いくらいに賑やかで活気に溢れている。
 朝顔の鉢植えが置かれた、朝日町商店街を抜けていく、駅前の街頭テレビでは力道山の空手チョップに、歓声を上げる。おじさん、お兄さんが集まっていた。大通りに出て見回すと、昭和の景色そのままの服装の人が忙しそうに歩いていた。

「動きまぁす、チン、チン……」チンチン電車が動き出し、ミゼットが警笛を鳴らし砂埃をたてて走り過ぎていき、荷台に一升瓶の醤油を載せたスーパーカブが走り、その後ろをランニングのおっさんが汗を流しながら自転車のペダルをこいでいった。ああ、いい匂いだ、昭和の香りだ、巨人大鵬卵焼き、人情と思いやりと糠味噌の臭いが漂っていた。
 昭和では、人と人が混ざり合ってて、子供らは群がって遊び、お祭りやや盆踊りではみんなが楽しみ、近所で困った人がいれば誰彼となく助け合っているのが昭和のおせっかいでもあった。
 懐かしい看板の純喫茶<モナリザ>の窓辺に座り煙草に火をつけ窓の外に目をやると、人情色をたっぷり含んだ三丁目の夕陽が山陰に隠れようとしていた。

  てくてくてくてく

 雀が電線でピーチクパーチク、物置の屋根では猫が居眠りし、軒下には段ボール箱の中に誰かが拾ってくれるのを待つように捨てられた子犬が三匹いた。町のレコード屋さんから、昭和歌謡が流れてきて思わず立ちすくむ

 <愛終列車> <僕はないちっち> <東京の灯よいつまでも> <湖愁> <骨まで愛して> <さすらい> <情熱の花> <喜びも悲しみも幾歳月> <ああ上野駅> <見上げてごらん夜の星を> ああ、いい唄ばっかりだ、、
 町工場の古ぼけた塀には映画のポスターがべたべたと貼ってあった。
 <嵐を呼ぶ男> <キューポラのある町> <二十四の瞳> <紅の拳銃> <下町の太陽> <ゴジラ> ああ、いい映画ばっかりだ、 

 子供だった昭和の頃の同級生や遊び友達が浮かぶ、清、ひろし、一郎、正、健一、次郎、三郎、四郎、政男、勇、しげお、すすむ、みのる、つとむ、まさこ、清子、幸子、美代子 千代子、ひさこ、文子、みちこ、京子、ひろ子、せつこ あの角を曲がれば憧れていた和子ちゃんちの家がある。

  その角には苦虫を潰した顔で、でこ眼鏡(めがね)の主(あるじ)が座っている古本屋<がらんどう>がある。古本屋には悩める青年がもう二時間も本棚の前を占領していた。薄暗い古本屋の電燈の下、昭和の時代には、「生きるとは何ぞや?}などを問う、文学青年、哲学青年が結構いたのだ。
<死にたくないのです、生きたいから不安になるのです、> 駄々をこねて、死にたいなどという贅沢病に感染した愚かな少年もいた。甘くて酸っぱい昭和遊歩だった。

昭和惜別の句

~忘れまじ 昭和の臭い 汲み便所~ 拙作
~街灯下 半ズボンで 鼻垂らし ~拙作
~夕暮れは  昭和の恋の 残り滓~ 拙作
~下駄ばきに 本を小脇の 悩み顔~

作:朽木一空

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最終更新日  2025.05.11 14:06:23
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