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2017.05.24
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カテゴリ:忍草シリーズ

忍草 浅草花川戸町 七軒店

豚鼻の儀十の巻 2



 故郷の匂い、母の芳香、花の香り、綺麗な香りばかりが匂いじゃねえ、黴臭い、きな臭い、血生臭い、胡散臭い、そんな陰臭腐臭も、江戸の町には漂ってるよ、生きてくことが馬鹿臭い?仕事するのも阿呆臭い?いっそ、消臭剤でも撒いて終わりにしちまいますか、、

 さてさて、屁を買う男、豚鼻の儀十は伝蔵の長屋に上がり込んだ。それでは失礼いたしまして、お内儀さんのお尻を拝ませていただきます。
「わたしゃ嫌だよ、恥ずかしいよ」
「何言ってやがる、金になるんだ、尻の穴に何かしようってなわけじゃねえんだ」
 伝蔵に言われて、しぶしぶ、仕方なしに着物をめくって、満々に太ったお月様のような白い尻を突出すと、儀十の豚鼻が、くんくんと動き、尻の穴に竹筒を押し当て、紙袋を被せ、
「それではおひとつお願い申します」
ぷうーぷうー、屁が出終わると竹筒を振り、素早く紙袋の首を紐で縛る。
「お内儀さんのものは混じりけのない芋っ屁で大変貴重なものでございました。さらに臭いも濃く、屁としては一級品の特上松でございます。八文でお買いいたします。旦那様もどうですか、一発、、、」
「いや、俺はいいよ、照れくせえ、、」
「なに照れてんの、私にやらせておいて、あんたのだっていい匂いがするよ、、」
仕方なく伝蔵も着物を捲って、瘤がついて、尻毛がはみ出している汚い尻を出す、すかさず、儀十が竹筒を充てる。
「はいっ、どうぞ!」
 うんっうんっ、ぶぅーぶっー
「しかと受け取りました、旦那様の屁には芋の香りに混ざりものがございまので、梅になります。三文でございます。また、調子を整えてお願いいたしやす。」
 屁を詰めた紙袋に墨で、日時、屁出人の名前、場所、などを書き入れ、さらに極上松の芋だの、混ざり芋の梅だのと書き入れて、竹の棒につるしていた。
 あっけにとられていたものの、どうにも腑に落ちない伝蔵とお福、
「おいっ、ところで集めた屁はどうするのだ」
「そいつは申せません、いいろいろ絡んでややこしくなりますので」
「まてまて、そうはいっても儂の屁がどこへ行って、なんの役に立つのか知らなければ気持ちが落ち着かぬ」
「そうですか、ではご内密にお願いいたしやす、屁は浅草花川戸の『香薫堂』へ集められます。店では屁を小袋に詰めなおしまして、臭い袋として売っているのでございます」
「ふうーん、だがね、そんな屁の詰まった袋を買うやつがいるのかい?」
「へっ、それがいるんですよ、色町の女、そう、岡場所の安女郎から、吉原の花魁、江戸城の大奥から、
お大名や大身旗本の奥方にも人気がございます、旦那、こいつは内緒の話でござんすよ、」
「わかってるよ、そんで、屁はいってえ、何に使うんでぃ」
「色町の女たちは、気に食わない質の悪い客がくると、臭い袋を布団の中で振るのだそうです。大概の男はその臭さに『参った、鼬(いたち)のおいらんだぁ!』と、退散するという具合で、お大名の奥方の方は、我慢できなくなった屁をすると、すかさず、おつきの者が『失礼いたしました、わたくしでございます』といって、臭い袋を振る。こちらのほうはみな上品な臭いの松を使います。」
「ふうーん、面白え話だが、ちょいと信用ならねえな、、なあお福」
「いいえ、私は聞いたことがあるわ、屁隠しの身代わり比丘尼という人が江戸城にはいるって話」
「そうです、この匂い袋がなくて、屁の身代わり比丘尼がいなければ、責任の押し付け合い、屁の臭いの犯人捜しで大奥は大騒動になるのでございます。でも、身代わり比丘尼がこの臭い袋を振れば、まあ、いい匂いがすること、おほほほほ、で済むのでございます。」
「へー、お城の中は不自由なこった、お福、お前は長屋暮らしでよかったな」
「ところで、伝蔵さん、昼間から屁をこいて、、いい御身分でございますね」
「何をいいやがる、俺は竈つくりの左官なんだ、今でも仕事がしたくてうずうずしてるんだがな、どうも、この頃親方がへんてこな竈を作らせやがってね」
「へえー、妙な竈とは面白そうな話ですな」
「面白くもねえよ、本所の藪蕎麦屋久兵衛の台所に、三つも竈(へっつい)を作らせやがる。火も入れそうもない竈だよ、おまけに、土台が臭い臭い、親方、この地面の下には屍体でも埋まってるんじゃねえのかい、と言ってやったよ、そしたらね、そうかもしれねえが、ご祝儀が多いんだから、文句言わずに黙って作りゃいいんだよ、と、ぬかしやがった。だがねえ、俺には、飾り物の竈なんざ作れねえ、でっ、親方と喧嘩しちまったのさ、ほら、そこの草履の裏についてる藪蕎麦屋の土間の泥だ、今でも臭うだろう」
「へいっ、確かに臭いますね、、、、」
 豚鼻の儀十の鼻がぴくんと動いた。
「それじゃ、あっしはこれで、失礼いたしやす。ありがとうございました」
 豚鼻の儀十は屁袋をいっぱいぶら下げた六尺の竹棒を担いで、伝蔵とお福の長屋を後にした。

 この男、豚鼻の儀十は、ただ屁を集めているだけではない、六尺棒に屁袋をぶら下げて、江戸八百八町の町の隅々を歩き廻りながら、鋭い嗅覚で江戸の町々の臭いを身体に覚え込ませていた。
 儀十は嗅覚がずば抜けて優れた、草と呼ばれた忍者なのでである。普段は庶民の生活の中に潜り込んでいて、上忍から密命があった時だけ忍者としての仕事をする。儀十の場合はその嗅覚を使って、人探しをすることだった。その豚鼻の儀十の嗅覚が伝蔵の草履の裏から探していた臭いを感知していた。


(つづく)

作:朽木一空


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Last updated  2017.05.24 12:38:37
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