映画に出てくる街の思い出(その1)
インド・ゴア(「ボーン・スプレマシー」から)僕が訪れたのは89年の10月と記憶してます。 「ボーン・スプレマシー」で主人公のボーンと恋人のマリーが潜伏していた土地です。 ボンベイから300km西に位置し、アラビア海に面した美しいビーチが点在するインドを代表する観光地。その一方で、70年代までは 世界中の放浪者がヒッピー最後の楽園として憧れた土地 でもあります。1960年代から70年代にかけて欧米から多くの若者達が祖国や家族の元を去り、中東やアジアを渡り歩いてインドに辿り着いたわけです。当然そこには大麻やその他ドラッグが蔓延し、美しい浜辺は 「ヒッピー」や「ヌーディストビーチ」の代名詞 にもなりました。その後、治安・秩序の回復のために当局はドラッグを厳罰化して厳しく対処、今ではこうした法律無視の退廃的なムーブメントはなくなりましたが、今でも世界中のバックパッカーや自由を愛する若者が訪れる街でもあります。また、一説ではいまでもトランスパーティーが行われているやにも聞いております。 ボーン と マリーが潜伏場所として選んだのも、その手の若いカップルに身をやつして、という設定なのでしょう。たしかに僕もはああいうカップルをよく見かけましたから、映画を見ながら「こういう白人いたいた~」なんて思ってました。僕は海辺の民家に、一週間100ルピーくらい(当時で1,000円程度)で泊まらせてもらいながら一週間滞在しました。インドは一か月ほど旅をしましたが、街中の喧騒に疲れて少し海でもみるか、ということになったのです。毎日何をするかといえば、ビーチにある季節はずれのレストランへ通うだけです。レストランというよりは「インド風海の家」といった趣きで、気のいいオヤジが一人でやってました。10月はシーズンオフ。客は殆ど毎日、僕だけでした。選ぶメニューも必ず「フィッシュピラフ」。魚とその他少しの魚介類をインド米で炒めたターメリック風味のピラフで、今思い出しても物凄くおいしい料理ではなかったはずなんですが、不思議とハマる味で、ビールとセットで毎日必ず食べてました。 実はこの海の家の食堂に、僕は絵を書いて残してきました 。鉛筆書きでインド人のおじいさんの顔を描き、よこに日本語でチラっと一言添えて。店のおやじがこの絵を気に入ってくれて「くれ」というのでその場であげました。壁がコンクリートで画鋲がきかないので、釘とハンマーでオヤジが打ちつけていたのを覚えています。海風に耐えられるようにビニールのルーズリーフに入れて。この店がまだ存在して、この絵がまだ残っていて、ロケで訪れたマットデイモンがこの絵を見て…なんて、限りなく低い可能性にでも妄想は膨らみます。人気blogランキング←