カテゴリ:民謡に関するちょっとしたお話
曲名で探して買っていると、同じトラッドのバージョン違いが続々と集まってきます。 まあ、演奏する側に人気というよりは聴く側(つまり私のことですが)に人気といったほうがいいのかもしれないけど。 今日の時点で10バージョン以上集まっているトラッドは以下のとおり。 The Blacksmith 17バージョン イングランドの歌。 何はともあれ、スティーライ・スパンのが有名なんじゃないかな。1作目でやって2作目でもやって、94年のライブ盤にも入ってる。 ほかにもロリーナ・マッケニットやシャーリー・コリンズもやってて、意外なところだとPILでベース弾いてたジャー・ウォブルも。 お気に入りのバージョンはプランクシティとスティーライ1作目かな。 プランクシティはバウロンとパイプが暴れだす後半がたまらないし、スティーライは女性2人の「ラララ…」がぐっと来ます。 Blackwater Side 13バージョン アイルランドの歌で、ニューイングランドやフランドルに移住した人たちのバラッド。ブラックウォーターはアイルランド南東部にある地名。 これはバート・ヤンシュ関連のが結構あります。自身のソロで3回取り上げていて、トリビュート作にも2つ。レッド・ツェッペリン(というかペイ爺)のもある意味ヤンシュ関連だよね。 ジョン・レンボーン・グループのバージョンが抜けてお気に入り。女声二重唱とフィドル&笛がたまらんぜ。 Cuckoo 14バージョン 元々はイングランドの歌だけど、アメリカにも広まっていた様子。 ストーン・エンジェルは2000年の再編作でも取り上げてます。 好きなのはペンタングルのバージョン。ジャッキー・マクシーの可憐な歌声と柔らかいツインギターはもちろんのこと、ダブルベースがすごくいかしてるのだ。 あとロリー・ギャラガーもやってるね。 Danny Boy 10バージョン 音楽どころか英語の教科書にまで載ってた。たぶん、アイルランド民謡の中でもとくに有名なんじゃないかと。 意識して集めたわけじゃなく、気が付いたら収録されていたというか。 で、持ってるバージョンを眺めてみると、演奏してるのはアイリッシュが多い。同じくアイルランド民謡の“ブラックウォーター・サイド”はイングランド方面で人気が高かったけど。 好きなのは…なんでしょ。エモーショナルな電気ギターが泣けるライオットのバージョンかなあ。 House Carpenter 10バージョン 19世紀イングランドの歌で、チャイルドバラッドの243番に制定されてます。 ジジババから若者まで広い世代が取り上げてますなあ。 旋律は大きく分けて2種類あり、A=ペンタングル、ジーン・リッチー、B=スウィーニーズ・メン、テンペスト、ミスター・フォックスとなってます(個人的に勝手に解釈)。 ジャッキーが歌い出しをトチるペンタングルのバージョンが一番好き…といいたいとこだけど、ヘタレ声炸裂のスウィーニー・バージョンもなかなかよろし。 John Barleycorn 16バージョン イングランドとスコットランドで広く歌われていたドリンキングソング。 17世紀に登場した歌とされていますが、実はもっと前から存在してたんじゃないかとの噂で持ちきりです。 歌詞はビール作りの行程を擬人化したものなんで、脚をちょん切ったり踏んづけたり絞って血を抜いたりと、描写はそれなりにグロ入ってます。 非常に人気の高い歌で、ジェスロ・タルやトラフィックもやってるし、ロイド御大やウォーターソン家(カーシー含む)、ヤング・トラディション、あとスティーライもフェアポートもやってる。 ペンタングルはやってないけど、レンボーンが好んで取り上げてるね。 Lark In The Morning 10バージョン アイルランドの歌で、なんか庶子とか誘惑とかそんな内容の歌詞らしいぞ。 これもいつの間にか集まってましたってパターンだす。 演奏してるのはアイリッシュとその他と半々ぐらい。ジョンストンズのかわいい歌唱も良いが、ここはパディ・タニーのトホホ声シンギングを推したいね。 Pretty Polly 12バージョン これはですね…どこ産なのか知らないけど、アメリカンフォーキーに好まれているようです。 どうやらマーダーバラッドみたい…早く訳さないとね! それほど好きな歌じゃなかったのだけど、いつの間にか溜まってきて、聴いてるうちに好きになってきた。 少し前に買ったメロウ・キャンドルの発掘音源っぽいやつにこれが入っていて、民謡もやってたんだなあって感動しましたよ♪ Reynardine 13バージョン イングランドとアイルランドで誕生し、次いで北米に広まったことになってるけど、Reynardがフランス語で狐を意味するため、フランス起源説も根強い。 私も何かヒントがあるかも、と「狐物語」を借りて読んでみました。平易な言葉で書かれてるから錯覚しそうになるけど、内容はかなーりエログロなんだよね。あれは子どもには読ませちゃいかん。 Rocky Road To Dublin 10バージョン アイルランドの戦いの歌らしい。何と戦ってるのかは知らないけどね! メドレーの一部として演奏してる人が結構います。 でもやっぱりチーフタンズがストーンズを呼び出してセッションしたやつが一番かっこいいなあ。 リードシンガーはコネフさんで、ミックさん以下ストーンズの面々はコーラス隊。でもさりげなく“サティスファクション”弾いてる。最後のほうで転調し、ジーン・バトラーが踊ってるのも楽しげで良いです。 ところでこの歌、メロディラインがなんとなく“Cam Ye O'er Frae France”に似てるんですが。 She Moved Through The Fair 11バージョン これもいつの間にか集まってたってやつだわ。 意識してないのに11バージョンも集まってしまったってことは、演奏者には大人気ってことなのかも。 アイルランド民謡だけど、私が持ってるバージョンでアイルランド人はチーフタンズ、ロリー・ギャラガー、ラウデスト・ウィスパーと3組しかいないよ。 Spanish Ladies 11バージョン アイルランドの歌もので好きなのは何かと問われたら絶対に出すよ、これ。 でも知ってしまいました。“Spanish Ladies”と“Spanish Lady”は別物ということを…違いは単数か複数かってことだけかと思ってたのにー! ウッズ・バンドとかダブリナーズとか、当地の人たちに好まれてます。 そういやチーフタンズの「ロング・ブラック・ヴェイル」の1曲目でスティングが歌ってた曲。メロディがこの曲によく似てるんだけど、何か関係あるのかな。 Trees They Do Grow High 12バージョン イングランドのサッドソングです。 年下の少年と結婚させられるもすぐに死別、1人で残された息子を育てる内容。政略結婚の悲劇ですね。 ほかにも“ボニー・ボーイ”とか“ロング・ア・グロウイング”とかのタイトルでも知られてます。 数年前の夏に開催されたアルタン祭りでは、アルタンのマレードさんとポール・ブレイディがこの歌を歌ってくれたっけ。それも、大好きなペンタングル型旋律で♪ Yarrow 10バージョン “Dowie Dens O' Yarrow”とも。スコットランドのマーダーバラッドです。 どんな風にマーダーかというとね、美人ちゃんに求婚した9人のうち、3人死亡、3人重傷、3人敗走。で、美人ちゃんの弟も「最も残忍な方法で」殺されるのです。犯人はヤーロウ出身の少年。 歌の最後のほうに「娘は長い髪を切り、それを最愛の弟の体に巻きつけた」っていう描写があってね、非常に胸キュンなのですよ。不気味っちゃあ不気味なんだけど、同時に神聖な感じもしまして。 木管の響きが厳かなヤンシュのバージョンがトップクラスの出来ですな。 今回は上っ面だけなぞりましたが、そのうち歌詞の紹介や聴き比べなんかもやってみようと思ってます。 たとえばこういうのとか。 ↓ ↓ <何やら思いつめた顔をしている1人の美少女。彼女の優しい兄が声をかけました。「何か悩みごとでも?よかったら俺に話してごらんよ」「あたし…お兄ちゃんに悪いことしちゃったの…」(中略)兄は離れて暮らす母親を訪問しました。「あんた、その剣に付いてる血はまさか…?」「俺、旅に出る。たぶんもう戻らないから。んじゃ」> かなり悲惨な内容のバラッドです。 悲惨というか倫理的に問題ありすぎです。 中略部分は近日公開。覚悟しといてね♪ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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同じ曲でも、歌う人によって感じが変わるので、その聴き比べが楽しいでしょうね。
「うん、やっぱり、この人のがいいな…」なんて。(笑) (2006/03/15 09:12:33 AM)
マロくんさん
思えばトラッドを聴いてなかった頃から、カバー曲の元ネタ探しは大好きだったっけ。 聞き比べの素質は元から持ってたのかもしれないですね。 今はちょっとエスカレートしすぎなような気がしないでもないけど、改める気はまったくないもんね。フフフ。 (2006/03/17 11:39:17 AM)
ash-treeさん
了解~続編やっちゃいますね。 実はですね、所有してるトラッドはほとんどエクセルに記録してあるのです。 一番左の段に曲名、2番目の段に産地、3番目以降に演奏者・・・みたいな感じで。 持ってない曲までエントリーしてあるから、開くのに時間がかかるのが難点だけど。 予行として9バージョン持ってるトラッド→Foggy Dew/Geordie/Lovely Joan/Lowlands Of Holland/Tam Lin。 (2006/03/17 07:05:44 PM)
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