アンサンブル・ソリテュード／フルートとギターのための

会社に勤めていた頃一時期上司でもあった先輩から数日前に電話があり、ちょっと相談したいことがあるということだった。仕事の話なら相談には乗れない旨を話すと、そうではなく、あるボランティアで手伝っている楽譜の点訳に関する件だと言う。
楽譜の点訳とはちょっと興味をそそられたので、では飲みながら話をしましょう、ということになり今日一緒に飲みに行った。

２年ぶりの再会の挨拶をして駅近くの焼き鳥屋さんに入り、まずは近況の報告をしあった。昔からお酒の好きな人だったが、今でも夕方４時頃から飲み始めているという。さすがに朝飲むのは止めたと言っていたが。
そんな話が一通り済んで本題に入ると、どうやら楽譜の点訳をしているボランティアの人が点訳結果が正しいかどうか検証するのに大変苦労しているのを見て昔のSE魂が湧き上がったらしく、何とかシステム的にお手伝いしたいと宣言をしてしまったらしい。

お手伝いしたいという内容は、点訳された楽譜をmusicXMLに逆変換し、それを市販の楽譜ソフトで演奏させれば点字楽譜が正しいかどうか検証できる、と考えたようだ。
数日前にこの件で電話をもらってからネットで点字楽譜のことを少し調べてみたところ、点字楽譜のルールそのものはそれほど複雑ではないように見えるが、逆にあいまいさがあるような気がした。それに楽譜データを構造化することが難しそうなのだ。
一方musicXMLは構造化された体系を持っているのでXMLから点字への変換はまだしも、その逆は大変難しそうに思えた。
その辺の事情を少し説明して、多分無理なような気がすると説得した。

さらに、世の中には既にmusicXMLから点字楽譜に点訳するソフトが公開されていることも伝え、こちらのアプローチの方がボランティアの労力も軽減されるのではないかと言ってみたが、どうも本人は納得していないようだ。どうしても自分が約束したことを実現したいという気持ちなのだろう。
現役時代なら少々困難な課題でも仕事だからと無理をして実現することはあったが、今はもうそんなことをする立場ではない。それでも当時のことを思い出して私に相談を持ちかけてくれたのだろう。結果的には今回は期待に応えてあげることはできなかったが、このような件で私を思い出してくれたことに感謝して別れた。

３月６日 木曜日 晴れ