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カテゴリ:科学と技術
●『量子のからみあう宇宙』(早川書房:アミール・D・アクセル)という本を読んだ。この本は、量子力学の誕生からテレポーテーションの実験に至るまでの物理学者達の奮闘の歴史を辿ったものである。
●専門的知識がなくとも、量子力学とはどのようなもので、量子のからみあいとはどのような不思議な現象なのかが分かり易く解説されていて、物理学者の人間ドラマも垣間見ることができる。 ![]() ●アインシュタイン達三人が量子力学者に突きつけた疑問(EPR論文)をベルの定理に基づいて、物理学者達が量子の絡み合いという量子の振る舞いを解き明かしていく。結果はアインシュタインの敗北になるが、問題を提起したアインシュタインの功績も大きいのかもしれない。 EPR論文の要旨 ある物理系において、その系を撹乱することなしに正確に予測できる属性こそが『物理的実在の要素』であると主張するものであり、ある場所で起こったことが瞬間的に別の場所に影響を与えることはないという仮定を置いたものである。 ベルの定理(ベル不等式)の要旨 量子論は隠れた変数や局所性の仮定とは相容れないこと、アインシュタインの因果律と局所性の考え方が量子力学の予測とは相容れないことを数学的に証明したものである。 量子の絡み合い 絡み合いがわれわれに教えてくれたのは、日常経験をもとに微小世界の出来事は理解できないということだ。…量子論では因果律という概念は崩れ、一つの物体が同時に一つの場所にしか存在できないという考え方も成り立たなくなる。…つまり絡み合いとは、二つ以上の粒子を一つの系と考えたとき、その系の状態が重ね合わされているということだ。そのような系では、われわれになじみのある空間的距離というものは意味をなさない。何キロも、あるいは何光年も離れた二つの粒子が、お互い強調して振る舞う。どんなに離れていようとも、一方に起きたことはもう一方にも瞬時に起こる。 物理学者達の言葉 おのおの完全に素性の明らかな二つの物体が、お互いに影響を及ぼしあってから再び離れると、二つの物体に関するわれわれの知識は、必ず『絡み合い』と呼ばれる状態になる。(エルウィン・シュレーディンガー) アインシュタインは、もし量子力学が正しいなら世界は狂気じみているといった。アインシュタインは正しかった。世界は狂気じみていたのだ。(ダニエル・グリーンバーガー) ベルの定理から導かれる帰結は哲学的に驚くべきものだ。科学者の持つ実在論を完全に捨て去るか、あるいはわれわれの持つ時空という概念を根本的に変えなければならない。(アブナー・シモニー、ジョン・クローザー) ●アインシュタインは「神がサイコロ遊びをするはずはなく、自然法則に確率の存在する余地はない」と頑なに信じていたようであるが、量子論は確率に基づいた理論である。 ●テレポーテション(瞬間的位置移動)において2つの実体間での通信があれば、光速一定を条件とする相対性理論は否定される。離れていても一つのものであって、通信しているのではないのであれば矛盾しないのだろうか? いずれにしても空間的距離の抵抗が無視されている。この問題は人知を超えているようだ。 ●アインシュタインのノーベル賞は「光電効果の説明」という量子論に関するもので、特殊相対性理論でも一般相対性理論でもない。量子論は疑う余地がなさそうであるが、相対論の方は眉唾に思える。いずれにしても、ノーベル賞の選考委員は取り返しのつかない過ちを犯さずにすむ。 ●量子力学に関しては、光子のテレポーテーションだけでなく、原子のテレポーテーションも成功したということのようである。量子暗号や量子コンピュータなどの研究も行われているという。 ●未来社会に、これらの量子力学の発展はどのように影響するのだろうか…。人間的な未来社会が到来する時点では、社会・経済システムだけでなく、物理学の公理も現代世界のものとは根本的に異なっているような予感がする。 ●物理学の公理に関して次のような提案サイトがある。 ◆時間・空間の反省と物理学の新しい基本公理の提案 ◆T理論 改訂版 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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