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カテゴリ:極私的映画史
もっと長生きして映画を撮ってほしかった監督の1人に相米慎二がいる。デビュー作「翔んだカップル」から最後の「風花」まで、ハズレのない監督であり、リアルタイムで全作品を見られた監督でもある。「相米慎二のどこが良いのか」と問われれば「相性がいい」と答えるしかない。映像のリズム感が気持ち良く、それでいて必ずどこかに胸をしめつける一瞬がはさみこまれている。全編の流れの中ですっと差し込まれたその一瞬が限りなく心地よい。 1983年に見た「ションベン・ライダー」では、クライマックスの「ふられてバンザイ」のシーンがそんな一瞬。ひと夏の冒険を経験した少年少女が歌い、踊る。少年時代の夏の終わりの感傷を、相米慎二は「歌い、踊る」という行為だけで表現して見せた。「ションベン・ライダー」には「役者を動かすこと」で物語を語る相米慎二らしい演出が随所に散りばめられ、最も好きな相米作品となった。 そんな相米慎二らしい作品だった「ションベン・ライダー」なのだが、どういうわけか、その公開は人気アニメ「うる星やつら オンリー・ユー」の併映という理解不能な2本立て。「うる星やつら」の監督は押井守だが、当時の「うる星やつら」のファンと相米慎二がかみ合うはずがない。ラムちゃんを見に来た中高生に囲まれ、何とも困った状況で映画を見たことは、今でも忘れられない。配給会社は、人気アイドルだった薬師丸ひろ子の2作品をヒットさせた相米慎二なら「うる星やつら」との相性もいいだろうと勘違いしたのだろうか。 いずれにせよ、そんな悪環境で見た「ションベン・ライダー」は、僕にとって相米慎二の最高傑作になった。この作品がなければ、以後、相米慎二の作品を追うことはなかった。なんであんなに早く亡くなってしまったのかと、残念でしようがない。 ションベン・ライダー (HDリマスター版) [ 藤竜也 ] お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018.03.11 22:53:32
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