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カテゴリ:思い出(社会人・海外)
世の中には在庫というものがある。人間が普通に生活しようとしたら、在庫無くしてやっていくことはできない。一般家庭において食料品で冷蔵庫に入っているモノはすべて在庫である。冷蔵庫以外の常温保管の食料品も在庫。一般家庭でも料理屋でも等しく同じだが、食料品の在庫がなかったら料理を提供することは不可能だろう。
衣料品も同じく在庫である。よほど服を買わない人ならわからないが、1年間1度も着ることがないという服はもちろん、普段はほとんど着ない服や、旅行や出張の時に使うだけの下着なども在庫の類である。パンツ3枚しか持たずに生活している人はほとんどいないだろう。2泊3日で出張に言ったら、帰宅して履くパンツがない状態なのだから。
ところがもう30年以上前から、製造業の世界では「在庫は悪」とされている。もちろんゼロにしなさいとは言われていないが、有名なトヨタ生産方式では、組立工場にある在庫は数時間分とされている。
在庫があるということは「お金の停滞」でありムダだとされているのだ。また在庫管理の費用もいらないし、倉庫も必要なくなるので在庫を無くすことは自動車メーカーにとってはメリットが大きい。 日本の自動車産業は高度に発展しているので、同じ組み立てラインで何種類もの車を製造することができる。段取り替えなどの手間を考えずに組立ができるからこそ成り立っている在庫削減である。ただし、自動車の組み立て工場に在庫は無いが、部品を作っている下請けの工場には山ほど在庫がある。数時間置きに納品しなくてはならないし、間に合わなければ自動車工場のラインが止まり、莫大な賠償金を取られてしまうからだ。
お父さんの会社は自動車関連ではないが、部品メーカーである。メーカーが製品に組み付ける部品を製造している。そして在庫の削減がうまくいかずにいつも悩んでいる。 自動車の組み立てラインと異なり、違う部品を作るには、機械の段取り替えをしなくてはならない。1個作って段取り替えと言う訳にはいかないので、生産計画で作る数を決めて、一定数を作ったら段取り替えをすることにしている。そのために在庫は必ず貯まるようになる。
さらに言うと、個々の生産機械は在庫があった方が生産がスムーズである。目の前に加工する製品がなければ機械は止まってしまう。逆に十分以上の在庫があれば、機械が止まることはないので、機械の稼働時間も生産数も上がる。なので生産現場は在庫を欲しがる。
段取り替えはどんなに改善したところで、面倒くさいモノである。よって生産現場、特に海外工場の生産現場は計画数以上に生産を続けてしまうことがある。次の生産品が予定されていても、加工前に在庫がある限り生産してしまいたいという気持ちになるのである。 結果として必要な量以上を生産することになり、在庫が増えていく。
本屋やネット上にはいかにして在庫削減をするかのノウハウが山ほどあるのだが、どれも簡単に成功してしまう内容ばかりである。何十年たってもそういうノウハウが販売されているということは、何十年たっても在庫は減っていないということだと思うし、減らすノウハウでは在庫は減らないということだとお父さんは思っている。
一般家庭でもそうだが、料理によって使用する食材の量は異なる。そしてスーパーで売っている食材を今日必要な分だけをきっちり買うことは不可能である。野菜を1個ずつ変えたとしても、ジャガイモ1個と大根1本では量が異なるし、購入分を1日の料理で使い切る献立を毎日考えていたら、頭がおかしくなってしまう。
それを生産工場ではやらなくてはならない。上司から在庫の話が出るたびに憂鬱になる。だがこの在庫との戦いはお父さんがどんな職種で働いていても続くことであろう。
ちなみに我が家ではすでに2台冷蔵庫があるのだが、さらに追加で冷凍庫を購入するかどうか検討している。長女が一人暮らしを初めて人数が減っているのにである。在庫の削減がいかに難しいかを物語っていると思う。お母さんの安い時の大量購入や義母からの食料品の宅急便などがなくなればもう少し楽になるのかもしれないのだが、その部分にお父さんは口を出すことができずにいる。
家庭の冷蔵庫ですら在庫削減に失敗しているお父さんに、会社の在庫削減ができるのかはなはだ疑問である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.04.27 00:10:10
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