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お父さんから子供たちへ

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2020.01.24
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カテゴリ:エッセイ
お父さんは子育てとか、子供の教育とか、そういうものに自信を持っているわけではない。どうすればいい親なのか、どういう親がいい親なのかもよくわからない。
 世の中には、スポーツで世界的な活躍をする子を育てた親の話や、東大にすべての子供を合格させた親の話や、そうでなくても子育てに関する本や情報があふれかえっている。

 お父さんは、残念ながらそういうものに全く興味がないのでそのような本を読んだことがない。今も読む必要を感じない。いや、お前たち3人の子供の親になってますます育児本関係に興味がなくなった。
 だって、同じ環境で育てていてもお前たち3人の特異なもの、好きなこと、性格、運動能力などすべてが違うことを実体験として持ってしまったのだから。

 お父さんがお前達にしてきたことは、自分の人生経験から必要だと思ったことをできる限りやらせてきただけだ。お母さんの人生経験からの考えも交じっているが。

 絶対音感があると生きていく上で人生が豊かになるというお母さんの経験からお前達には子供のころピアノを習わせた。現在3人ともやめてしまったが、ギリギリだがピアノを弾けるのは長女のTぐらいだろうか。

 字がきれいにかけずに劣等感を持ち続けているお父さんは、お前たちに習字(毛筆も硬筆も)を習わせているが、相変わらずお前たちの字は汚い。なぜ級や段が上がるのかいまだに不思議だ。

 まあ習い事だけの話をしたいわけではない。お父さんが「良い親」なのかとふと考えた時に、「良い親」の定義がわからなくてとりあえず子供に影響を強引に与えたものを書いてみただけだ。

 ちなみにお父さんが自分の両親を「良い親」なのかと考えてみたが、これもわからない。育ててくれたことに感謝はしている。でも、ちょっと書き出すことが難しいぐらいにお父さんのお父さん(お前たちのおじいちゃん)は理不尽だった。今でもそうだ。自分だけが正しく、人の意見を聞かない。自分の決定で進めたことがうまくいかないとすぐ人のせいにする。約束は守らない。身内であろうが、友人であろうが、苦言を言う人をすぐに敵として認定する。おかげで様々な親せきと断絶状態になっている。
 両親の不仲もお父さんたち兄弟を苦しめてきたし、今も苦しめている。お前たちにお父さんの両親が不仲であり、別居状態にある理由をまだ説明できていないからお前たちはいまだに不思議に思っている。とても疲れる。

 でもお父さんの両親は、お父さんが社会人になり独立するまで育ててくれたし、感謝はしている。愛情も感じて育ってきたと思う。お父さんのお母さん(お前たちのおばあちゃん)は少なくとも常識人だと思うし。

 お父さんが子供を育てるときに、ひとつだけ「方針」としたものがある。それは、「理不尽に育てる」ということだ。お前たちによっては結構きついと思っているが、これも実はお父さんの人生経験から来ている。

 さっきも書いたが、お前たちのおじいちゃんはとにかく理不尽だった。言っていたことを後から変えることが一番こまった(怒られる理由がまるで逆になる)やるなと言われてやらないようにしていたら、何でやっていないのだと後から怒られる。人を信じないどころか家族でさえも泥棒扱いされた。例えば、どこかに置いておいたらしい貴重品がなくなると、必ず家族の誰かのせいにされた。警察を呼んで調べるとまで何度も言っていた。時がたったころに、自分が別の場所においていたり、隠していたりして、自分で発見する。嬉しそうに「あった」というが、泥棒扱いされた家族がそれを喜ぶはずがない。もちろん謝罪もない。このクセは今でも続いている。そのうちお前達にも被害があるかもしれない。すでにお前の従弟が1歳の時に、「泥棒」と認定されている。引き出しを開けたり閉めたりして遊んでいただけなのだが。

 人を怒るときも、人格を否定したり、自分ではどうにもならないこと(例えば次男に生まれたこと)などを理由にする。とにかく人間的には下の下の人だと思っている。

 しかしながら、親としてみた時に、お父さんはその後の人生でとても助かっている部分がある。「反面教師として」というのもあるがそれだけではない。お父さんはおじいちゃんよりもひどいことを言う人間にこれまでであったことがない。わがままな人にも出会ったことがない。おかげでその後の人生で、お父さんの周りの人が、ちょっとした言葉に怒ったり、自分勝手な人を嫌いになって関係が悪化したりと、大変そうな中、お父さんはほとんど気にせずに生きてこれた。その程度のことはおじいちゃんに言われたりされたりしたことに比べれば、たいしたことがなかったからだ。

 社会に出ると、いろんなことがある。正義や正論だけで世の中は動いていない。というより正義や正論で動いているほうが少ないと思ったほうが良いと思う。世の中は「理不尽」であふれかえっているのだ。だからお父さんは、おじいちゃんほどではないがなるべく理不尽にふるまっている。あまり正論や正義でお前たちを説得したりしない。ただ理不尽に命令している。
 息子はすでに「お父さんは自分勝手」とお母さんに話しているようだし、長女は「お父さんが言い出したら聞かないから、あきらめる」という話もしているようだ。
 悪く思われるのは親として悲しいところもあるが、理不尽さに耐えて社会に出て行ってもらおうと思っているので、変えるつもりはない。

 さて、元の「良い親」とはというところに戻るのだが、結局何が良い親なのかはわからない。子供を甘やかしすぎて、社会に出たとたん生きてゆけずに引きこもりになる子供もいるらしい。お父さんが見ていても社会の理不尽さに我慢ができず転職を繰り返す人もいる。親もすぐに転職に賛成するらしい。

 逆に子供時代に厳しくされすぎて、すべてにおびえたようになり、自主性がまるでない大人になってしまう例も結構見てきた。

 お父さんが思うに、どんな親も基本的には子供の幸せを願っていて、子供の為にいろいろ考えている。最終的にはその方針が「自分の子供にあっているか」だと思う。何をもって良い親かというのは、親と子供の相性が大きく影響すると思う。
 なのでこれからもお父さんは育児関連の本を読んだり、話を聞くつもりはあまりない。

 お前たちが将来「人の親」になったとき、自分なりの「良い親」を模索していけばよいと思う。頑張ってくれ。





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最終更新日  2020.01.24 00:10:07
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