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お父さんから子供たちへ

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2020.03.05
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お父さんは2010年に今住んでいる家を新築して引っ越しをした。設計を始めたのが2月、地鎮祭が7月で12月に家が完成して引っ越しをした。まさか3か月後に東日本大震災が発生するなど知る由もなかった。幸いなことに家は壁にひびが入った程度で構造自体に問題は無く、軽い修理で今も住むことができているが。

 さて今回書きたかったのは震災の話ではない。家相についてだ。お父さんのお父さん(お前たちのおじいちゃん)は暦や家相をとても気にする人だ。お父さんは子供のころからお前たちのおじいちゃんが家相にこだわるのを見て、「家の間取りや方角で人生が変わるわけがない」と思っていた。
 
 しかしながらある時から若干考え方が変わった。お父さんが大学生のころ、日本でバブル崩壊と呼ばれる景気の悪化があった。これによって破産する人が増加し、家や土地が競売にかけられることになった。幸いお前たちのおじいちゃんはバブル崩壊の影響は受けたが破産するような投資もしていなかったので、比較的平穏だった。
 そして競売にかけられた家や土地でよいものがあれば購入しようと情報を集めていた。お父さんが大学生で岩手に遊びに行ったとき、何日かかけてお前たちのおじいちゃんと競売物件を見て歩いたことがある。

 その時に感じたことは、競売にかけられた家や土地はことごとく家相が悪かったということだ。家相について詳しくは書かないが、家によってはなぜこんな設計にしたのだろうというくらい家相の基本を外していた。その時のお父さんは家相など知らなかったが、おじいちゃんが悪い部分を一つ一つ解説してくれた。結局お父さんが一緒に見て歩いた家や土地はすべて家相が悪くて購入する気になれないとお前たちのおじいちゃんは結論づけていた。
 それでもまだ、お父さんは自分が家を建てるときは家相よりも使い勝手優先にしたいと思っていた。

 そして2010年、自分が家を建てることにしたとき、お父さんは家相とどう向き合うかで悩んだ。すでにお前達3人が生まれていた。家相には方角により作ってはいけない部屋や設備と、それを無視すると発生する凶事が書いてある。
 例えば鬼門(北東)について、玄関があると人が寄り付かず商売が失敗する、台所があると家族が病気になる、浴室があると子供が病弱になるなどである。特に家族が病気になるとか不運が絶えないとか書いてあるとやはり不安になる。

 ちなみに引っ越しの方位もかなり気にしていた。お父さんより1年前に新築して引っ越しをした友人は、転居方向がその年の「暗剣殺」と言われる方角で、家相や暦の本では絶対に移動してはいけない方向だった。そして引っ越しして3か月もしないうちに奥さんが病気になり入院して手術をすることになった。今は元気になっているからいいのだけれど。
 
 そんなこんながあり、やはりお父さんは家相を大いに研究して家の設計をした。すべてを完ぺきにすることはできないが、「大凶」となるものは絶対に避け、「凶」の中でも比較的軽いものを使って家の設計を進めていった。
 非科学的だと思っていた家相だが、いざ自分の家を建築するとなるとやはり猛烈に気になってしまったのだ。幸いお母さんがお父さんの家相へのこだわりにある程度理解を示してくれたので夫婦でもめることはなかった。

 最終的にできた今の我が家は家相上悪くはない家になっていると思う。ただし専門家に見てもらったわけではない。家相の本を買ってお父さんが独自に判断して設計に盛り込んだだけだ。今更専門家に見てもらおうとは思ってはいない。
 なぜなら引っ越しをして今年で10年目を迎えるが、家族全員それなりに順調に生活しているからだ。すごく幸運とも言い切れないが、不幸は基本的に起きていないと思っている。いや家族が元気で過ごしているだけで十分幸運だ。生活に困るほど困窮もしていない。

 お前たちもこれから家を建てたり、マンションを購入したりすることがあるだろう。気にしないなら気にしないでいいとは思うが、お父さんの頭の中にはあの時勉強した家相の知識がまだ残っている。幸運になる家に住む必要は無いと思うが、不幸になる家相にはなるべく住まないようにしてくれることを願う。

 今の家族の状況を見て、家相にこだわって家を建てたことは良かったと思っている。たとえ家相などまるで関係していないとしても。
 そして今後お前たちの周りで家を建てる人が、家相にこだわっていた時に余計なことを言わないようにとくぎを刺しておく。基本的には当事者の心の問題なのだから、周りから余計なことは言うべきではない。ただ恨みを買うだけである。





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最終更新日  2020.03.05 00:10:06
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