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カテゴリ:思い出(アメリカ留学時代)
お父さんはアメリカに留学した経験があるのはお前たちが知っている通りだ。アメリカ留学には当然英語の能力が必要になる。しかしながらアメリカに留学する前のお父さんは英語がどちらかというと苦手だった。
高校受験、大学受験と英語で入試を受けてきたので一般的な英語はそこそこ頭に入っていた。また大学時代には英語論文の和訳なども良くやっていたので、読み書きはそれなりにできたかもしれない。しかしながら留学に必要な能力は読み書きだけではない。リスニングとスピーキング、要は会話ができなくてはならないのだ。 お父さんの学生時代には「英会話」の授業というものが基本的になかった。よってお父さんは英会話ができない状態でアメリカに渡った。アメリカで英語の中で生活すれば、英会話など簡単に身につくだろうと楽観的に考えていた。 英語のできないお父さんは、まずはアメリカで語学学校に入った。ここで勉強してTOFLEというテストで必要点数を取るのが目的だった。 語学学校の初日、お父さんはクラス分けのテストを受けた。お父さんの入学した語学学校はレベルが低い方から100クラス、200クラス、となっており、一番ハイレベルが600クラスとなっていた。ただし入学のクラス分けではどんなに成績が良くても500クラスからスタートするシステムだった。 試験の内容は筆記試験のみで、文法のテストと作文のテストだけだった。読み書きがそれなりにできたお父さんはそれほど苦労せずにテストを終えた。そしてクラス分け発表の日、お父さんは400クラスに入ることになった。500に入れるかもと思っていたぐらい自信があったのでちょっとがっかりしたのを覚えている。 授業初日、お父さんは愕然とした。先生がクラスに入ってきて英語で話し始めたのだが、全く何を言っているのかわからなかった。単語の意味が分からないのではなく、話している単語が聞き取れないのだ。お父さんは致命的にリスニングができなかったようだ。 周りを見回すとほとんどの生徒が先生の英語にうなずいている。初めてのクラスで最初に行うのは自己紹介だ。順番に自己紹介が始まったが、クラスメートの英語も何を言っているのかわからない。お父さんは自分の番では英語で自己紹介ができた。どうやらみんなには通じているようだ。ほっとしたがリスニング能力がすぐに身につくわけではない。 初日の授業で、文法・リーディング・作文などの授業別に宿題が出たが、宿題の内容が聞き取れなかった。クラスメートに聞いてみたが、お父さんの英語は通じるのだが相手が話している英語がわからない。泣きそうな思い出何とか宿題の内容を理解した。 次の日もその次の日も、先生の言っている英語はほとんどわからなかった。お父さんのクラスにはアジアや南米、ヨーロッパやアフリカなど世界各国から生徒が集まっていたが、日本人はお父さん一人だった。学校にはたくさん日本人がいたが、お父さんのクラスはお父さんはただ一人の日本人だったのだ。なので授業中も休み時間もすべて英語で会話しなければならなかった。 この時初めて気づいたのだが、多くの国では、特にアルファベット表記をする言語の国では文法やリーディングよりも会話が最初の授業にあるらしく、読み書きなどは後から覚えるようだった。日本とはまるで逆だ。これも後から気がついたのだが、クラスメートの英会話は文法も単語の発音もめちゃくちゃだった。ただでさえリスニングができないお父さんが理解できるはずがなかった。 お父さんは学校の相談室に行き、リスニングができないからクラスレベルを下げてほしいと懇願した。しかしながら再三の要請にも関わらず願いは聞き届けられなかった。最初の1か月は地獄の様だった。1日の授業のほとんどが聞き取れないのだから。 仕方なくお父さんはテキスト内容を日本から持ってきた日本語の英語参考書を読みながら勉強した。そして簡単な英会話のカセットテープを聞きながら必死でリスニング能力を鍛えることになった。すべて日本から持ってきた教材だ。 英語の中に飛び込めば英語が話せるようになるというのは、間違いではないのかもしれない。特に日常生活や観光レベルならば。ただし大学で学ぶための英語はそのレベルでは全く役に立たない。もし、お前たちが海外で生活することを望むのならば、日本で日本語である程度対象の外国語を習得してから出ないといけない。特に重要なのは「会話」の能力、つまりはリスニングとスピーキングだ。文法などめちゃくちゃでいい。とにかく会話だ。これを必死で日本語で教えてもらうのだ。 最終的にお父さんはTOFLEの目標点を取り、無事に大学院に入学を許されたが、正直とても大変だった。お前たちが語学を学ぶ時には日本語で教えてもらえる機会を大切にしてほしいと思う。「行けば大丈夫」というのはお父さんにとっては全くのデマだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020.04.10 00:10:06
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