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カテゴリ:思い出(社会人・海外)
ベトナムでベトナム人と仕事をしていると、文化や習慣の違いでいろいろと大変な思いをする。面白いとか楽しいで済む事もあるのだが、仕事に関しては大概疲れることが多い。今回はその中の一つであるベトナム人のひらめきと行動力について書いてみたいと思う。
ベトナム人はひらめきをとても大事にする民族だ。思いついたアイデアがすぐに実現できないとストレスがたまるようだ。日本人がアイデアを検討している間に、ベトナム人は行動に移ってしまう。そのひらめきが、なんの問題点もなく本当に良いことだけのアイデアであれば、物事は一気に良い方に進む。 個人的にひらめいたアイデアを事業化するような話ならそれでよいかもしれないが、会社という組織の中では困ることが多い。 たとえ無謬のアイデアであり、即実行して大きな成果を上げたとしても、最終的に問題になるのが会社組織なのだ。なぜなら、多くの社員が、各々のひらめきアイデアをどんどん実行しようとするからだ。これまでのルールややり方を一切無視した大胆なアイデアほどその影響は大きい。 少なくとも日本人の組織にはそぐわないやり方である。 先日もベトナム人スタッフから工場内にコンベアをつけたいという提案があった。今まで台車で運んでいたものをコンベアで移動すれば作業が楽になるということだった。ベトナム人は発案者だけでなく、他のスタッフも「こんないいアイデアはすぐに実行しましょう」という雰囲気だったが、お父さんは日本人であるためすぐに決断はできない。 とりあえず、現状とコンベアを導入した後の違いを一つ一つ確認していった。下記に内容を箇条書きにするから読んでみてほしい。 ①コンベアを設置する⇒台車で運んでいる作業者が不要になる ②不要になった作業者はコンベアから保管棚に部品を入れる作業をする (ちなみに現在も台車で回りながら保管棚に部品を入れている) ③部品の滞留がなくなる⇒台車で運んでいる作業者が間に合わないとかせかされることがなくなる (ちなみに今でも台車作業者は手が空いていて、他工程の作業も手伝っている) お父さんの結論 ・作業者の人数は増えることは無いが、減ることもないので労務費の削減にはならない。 ・台車作業者は棚に部品を入れるだけと作業が軽減されるが、1分間に1個入れるだけなので、ものすごく暇になる。暇になった時間を別の作業に当てる予定はないので、コンベアを設置した経費は回収できない。 ・そもそも部品は現状で滞留していない(そのために台車で部品を運ぶ専用の人がいる) ・コンベアを設置しても、だれも得をしないので設置の必要はない。 この結論に対して、発案者だけでなくベトナム人スタッフは猛烈に不満を持った。打ち合わせで結論を言ったときの不満顔がすごかった。でもここで引き下がるわけにはいかないので、評価できる結果が予測できないものはやらないと言い切った。 今回はお父さんの許可がないと設備購入ができないのでストップをかけることができたが、勝手にやられてしまうことも結構ある。例えば、社員教育などがそうだ。不良を出した原因は作業者の能力が低いことが原因(思い込みだが)と結論付けると、すぐに「教育をします」と言い出す。 いつやるのかと聞くと「明日です」となる。教育内容も、教育方法も、教育後の評価方法も決めていないのだが、教育実施日と教育を受ける人は一瞬で決まるのだ。 結果として、成果の出ない教育が実施され工場内で得をする人はいないし、会社も何の利益も生み出さない。ただし「教育をした」という実績を残した発案者の自己満足はあるらしい。私は素晴らしいことをしたと。 ベトナム人のひらめき後の行動力は素晴らしいとお父さんは思っている。日本人にはまねができない。だから成功する人は、日本人のサクセスストリーがバカバカしく思えるぐらいの成功をおさめていく。ただし成功する人は本当に一部であり、多くの人は失敗していくのだが。それでも成功した人にあこがれて次から次へ行動を起こす人が出てくる。 東南アジアの急激な発展はこのメンタリティーが大きくかかわっていると思っている。日本人が同じメンタリティーを持っていれば、日本には今の10倍ぐらいの富豪がいたことだろう。もちろん没落する人も今の100倍以上いたと思うが。 ひらめいて行動、ひらめいて行動を繰り返せあいつかは当りを引くことができるかもしれないが、工場という確立されたシステムで運営している場所では弊害の方が多い。ひらめきを否定され行動できないことに不満を持つベトナム人と、後先考えずにとにかく実行したいベトナム方式にストップをかけて疲れる日本人。溝とまでは言わないが、お互いが幸せではないことは確かだ。ベトナム人だけのベトナムの会社はどうやって運営しているのだろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.04.13 00:10:07
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