今までの人生で、5分で変わる人生とか、3日で英語が話せるとか、とにかく短時間ですさまじい成果をあげることをタイトルにした書籍を購入したことはないだろうか。お父さんはある。
ではそれらの書籍で本当にタイトル通りの効果があったものがあるかといえば、もちろん無いとしか答えられない。
先日年末になると出てくる「まだ間に合う」的な受験対策の塾のCMの話をしたが、人間というのは、たぶん無理だろうと思いつつ、「できる」と自信をもって言われるとそうだったらいいなと思って信じてしまう生き物だと思う。
お父さんが大学受験の年に、中学校のクラスメートから夏ごろに電話があった。半年で地理をマスターしたいとの話だったが、「地道に勉強するしかない」としか答えられなかった。同一人物が12月になって、今度は「世界史を1か月でマスターしたいので方法を教えてくれ」と電話があった。お父さんはあきらめろとしか言えなかった。そもそも本当にそんな方法があったら、全受験生がやるだろうし、お父さんに特別な才能が有って、それを可能にできたなら今の仕事をしていないだろう。
このようなことは、冷静な時は誰もが理解していることである。本を読んで痩せた人はいないし、本を読んでお金持ちになった人もいない。それでもその手の本は手を変え品を変えて世の中にあふれている。例を挙げてみると
・人生を変える7つの習慣
・20代にしておくべき17のこと、30代にしておくべき・・・、40歳からの・・・
・3日で分かる株式投資
・ユダヤ人大富豪の教え
・7日間ダイエット
・激やせストレッチ
・7日間でペラペラになれる本
・6年分の英語が10日で身につく
などなど
これを読めば英語ができる、お金持ちになれる、株で儲けることができる、人生が劇的に変わる、簡単に痩せることができるなど、そんな魔法があればいいのにといった内容のものがたくさん出版されている。
お父さんも同じであるが、人間は努力するのは苦手である。それでも英語が話せるようになりたい、痩せたい、お金持ちになりたいなどの願望は常に持っているものである。
実際に行動し、且つ続けていかなければどれも達成できるものではないとわかっているのに、「簡単にできますよ」という本に手が伸びてしまうものなのだ。
もう一つ、そういう本に手が伸びる理由がある。それが書籍(活字)の魔力だ。本になって出版されているものを「ウソだ」と断定できる人はなかなかいない。ましてや有名人が帯に推薦の言葉や実績などを書いてあると、ますます信じてみようという気になってしまう。
書籍販売も商業の一つであるから、どんなものが売れるか、どんなタイトルが良いか、どういう売り方が良いのかと日々研究している。
これからも心の弱い人やあわよくばと考えている人はこの手の本を買い続けていくのだろう。過去にバカ売れした本で、お父さんの会社でも全社員に配布された「チーズはどこへいった」という本がある。この本で人生を変えることができたのはおそらく著者とその関係者だけだろう。
この手の本が消えることは無いし、買う人がいなくなることもない。需要と供給ががっちりと成り立っている。