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カテゴリ:エッセイ
先日お父さんの同僚が独立して自分の店を出すために退職した。お父さんより年上で、社長との交友関係から入社した人だった。仕事の評価は中の下ぐらいであったが、基本的にはまじめな社員であった。ただ私生活のだらしのなさが仕事にも響いていたという問題点がその同僚にあることは、誰もが認めていた。 そのため最近は、社長からの印象が悪くなっていて、社長から直接呼び出されて怒られたり、社長からお父さんに「しっかり注意しろ」と指示があることもあった。
その同僚も、昔は友人だった社長が、自分を雇用する人間になり、自分への態度が大きく変わったことに長年不満を抱えていた。友人にやとわれて給与をもらうというのは、短期のヘルプならともかく、長年やるものではないとお父さんは思う。通常の従業員としてのメンタルで雇用者の友人と接することができないからだ。
さて、どの同僚のお店がオープンするときに、お祝いのお花を出そうと同僚たちで相談をしていた。お父さんはもちろんその話に乗ったのだが、あとで社長から文句が出るのも嫌だったので、社長に「連名で花をだしますか?」と確認をした。「YES」という返事しか予想していなかったのだが、実際は「NO」と言われた。 社長は理由をお父さんに話したが、要約すれば「今回の退職&独立」を社長は快く思っていないということを伝えたかったからだそうだ。
お父さんも社長の気持ちはわからなくはない。友人として、部下として大事にしてきたのに裏切られた気分になっているのだと思う。だが、この「怒っている」「気に入らない」という感情を相手に伝えることは極めて不合理であるとお父さんは考えている。
会社を辞めた人間というのは、もう会社の上下関係やしがらみから解放されている。社員だったときは言わないようにしていた思いや実態を、社外の人に話しても咎められない立場の人になっているのだ。 よって、会社に悪印象を持っていれば「会社の悪口をあちこちで話す人」になる可能性がある。元社員の話なので、たとえそれが作り話であっても、「事実」として受け入れられる可能性が大いにある。これは本当に怖いことで、お父さんの会社の様に田舎に存在する会社の場合、すぐに広まってしまうし、都市部にある会社だったとしても、今はインターネット経由でいくらでも広まってしまう
なのでお父さんは「やめてくれて助かった」と思えるような人でも、退職前には面接をして「よくやってくれていたのに残念だ」とか「本当はもっと続けてほしかった」とか、「次の仕事で成功することを祈っている」という話をする。 どれぐらい効果があるかはいまだに分からないが、少なくとも「お前が止めて清々する」というよりも絶対良いと思っている。
だから今回の同僚のお店にも開店祝いの花を出すし、開店後には店に行くつもりである。どんなに腹が立っていたとしても、それを相手に感じさせるのは良いこととは思えない。ましてや「気に入らない」と伝えれば、相手も同じ状態になることは間違いないだろう。 退職した社員とは上下関係もなくなるので、かつての部下であったとしても優しく礼儀正しく接するのが正解だとお父さんは思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.12.09 00:10:12
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