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カテゴリ:思い出(社会人・海外)
お父さんが会社でタバコを吸っている屋外の喫煙所の近くに石灯篭が立っている。創業者の現会長が自費で建てたもので高さが3m近くある。竜の彫刻などが施されたいかにも成金趣味のデザインだが、中国やベトナムなら大人気になりそうな灯篭である。
さてこの灯篭に、小さなアマガエルが貼り付いていた。お父さんと一緒によく喫煙している工場長が教えてくれたのだが、位置を微妙に変えながらずっと貼り付いているという。お父さんは変えるがずっと同じところにいる生物というイメージがなかったので、そんなことはないだろうと思っていた。
とりあえず灯篭にいるカエルを確認して、フーンと思いながらその時は終わった。ところが翌日、灯篭を見ると確かに前日に見たアマガエルがほぼ同じ位置に貼り付いていた。動かないというのは本当なのだなと思ったが、逆に何か原因があって動けないのかもしれないとも思った。餌となる虫がいるとは思えなかったからである。
ところが翌日も、カエルは同じ位置にいた。そしてお父さんも、このカエルはこの位置を定位置として活動しているということを理解した。なぜならそこにカエルが出したフンがあったからである。よく見ると、これまでにしたフンをいくつか見つけることができた。
それからは喫煙所に行くたびにカエルとチェックするようになった。工場長と一緒になると、「工場長の相棒が今日もいる」とまずカエルが話題になった。 通常アマガエルは周囲の色に体の色を合わせる生物なのだが、このアマガエルはキレイな緑色をずっと保っていた。 ちなみに他のアマガエルがくっついているのも見つけたが、こちらは灯篭に合わせて灰色に体色を変化させていた。このカエルは1日でいなくなったので、やはり工場長の相棒は灯篭をすみかにしているようだった。
週末を越えてまだそこにいることを確認できた時は、お父さんもうれしかった。それにしても何日も灯篭に貼り付いているのにいつまでも緑色なのは不思議だった。灯篭にたかっていると目立つので、鳥に見つかって食べられてしまわないか心配だった。
そしてついにお別れの時が来た。結構なゲリラ雷雨が夜中にあった翌日、カエルは姿を消していた。別にエサを与えていたわけでもなく、ただそこにいただけのカエルであったが、いなくなるとやはり寂しさを感じるのは不思議だった。最初は工場長の相棒とからかうだけの存在だっただけなのに、人間の感情は不思議なモノである。10日間ぐらいは毎日チェックしていたので、やはり愛着がわいたというか、縁ができてしまったのかもしれない。
これからもしばらくは灯篭をチェックしてしまうだろうと思う。だがあのアマガエルが再び戻ってくることはおそらくないと思うと、やはり寂しいものである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.09.21 00:10:16
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