2019/01/25(金)06:30
初めて森田理論学習に取り組む人へ
カウンセリングで何よりも重要な事は、実際にどうするかを決めるのは、相談に来たその人だということです。
クライアントはカウンセラーの前で悩みを打ち明けるだけで随分気持ちが楽になります。
クライアントは話すことで、まず心を軽くし、直面している問題を整理し、どんな解決方法はあり得るか、または、そんなものは無いのかを考え、自分の生き方を振り返り、反省して実行できるものは実行に移す、そんな作業をするわけです。
その作業を側面から手伝うのがカウンセラーという人の役目なのです。
ところが、人から相談されるので、つい自分は偉い人間だと思ってしまうのか、カウンセラーの中には、相談に来た人に自説を押し付け、聞こうとしないで文句を言う者もいるのです。
またクライアントの中には、自分で悩みや問題の解決などを一切しないで、最初から「何でも教えて。先生の言った通り、何でもしますから」という態度を取っている人も少なくない。
「最後は自分で決めることですよ。家に帰ってよく考えなさい」などと言われると、もの足りなさそうに反発する人もいる。
(アダルトチルドレンの心理学 荒木創造 日本文芸社 250ページより引用)
森田理論学習を行っている集談会には、神経症で苦しんでいる人が数多く参加される。
このカウンセリングの話は、私たちが注意しなければならない問題を提起している。
集談会に初めて参加した人は、とても緊張している。
だからまず、緊張感を取り除いてあげることが必要だ。
初めて来られた人には、笑顔で一言声をかけてあげることが必要だ。
笑顔で温かく迎えてあげることが大切だ。
「よく来られましたね。この会はホームページで見つけられたのですか」などと声をかけてあげる。
誰も対応しないで、そのまま放置されていると不安になってくると思う。
また何回も参加している人が親しそうに会話をしているのを見て、不安をあおることもある。
集談会は始まる冒頭には、この会の運営方針や指針について伝えることも必要である。
自分の自己紹介は、初めて来られた方に配慮して、自分が神経症で苦しんでいたときのことを話してあげる。初めて来られた人は、自己紹介は最後にしてもらう。
自己紹介カードを見て分かる範囲で自己紹介をしてもらう。
体験交流ではそれを元にして、さらに話してもらう。
ここではできるだけ多く、自己開示をしてもらう。ただし無理強いしてはいけない。
そのためには、ここでの話は決して誰も口外しないことを説明する。
他の参加者は初めて参加した人の話に真剣に耳を傾ける。
ここでは性急にアドバイスをしてはいけない。
受容と共感の気持ちで聴くことに専念をする。
参加者の前で自分の悩みを話すだけで随分気持ちが楽になるのだと言うことを忘れてはならない。
次に、初めて参加された人は、森田療法理論が本当に自分の悩みを解決してくれるものであるかどうかが気になる。今まで薬物療法やカウンセリング、認知行動療法などの精神療法を受けられた人も多い。
神経症克服のために、どのやり方が自分に合っているのかを見極めに来られているのだと思う。
その1つの方法として、森田療法理論の学習会に参加されたということである。
ですから、様子見で参加されている人が多いという認識を持っておくことが必要である。
それで1回参加しただけで来なくなってしまう人が多いのだ。
こういう状況の中で、私たちはその人たちにどのような対応をすればよいのか。
続けて参加してもらいたいために、性急に森田理論の内容を説明をすることがある。
あるいは森田療法理論を使ったアドバイスを行うことがある。
これらは、最初のうちは差し控えた方が良いと思う。
相手にとっては押しつけがましく聞こえるかもしれない。
すべての人に森田療法が適用できるわけではないという気持ちを持っておくことは大切だ。
1回だけで終わってしまう人は、森田療法理論には縁がなかったと諦めるしかない。
森田療法理論が自分に合っているのか、合っていないのかを決めるのは、相手自身である。
そのための判断材料を提供してあげるのが私たちの役目ではなかろうか。
自助組織の仕組みと役割の説明。森田の参考図書の紹介。外来森田療法を行っている精神科医の紹介。森田療法を取り入れている臨床心理士の紹介。心の健康セミナーの紹介。などなど。
最初から森田理論を説明するのではなく、外堀から埋めていく方法である。
こうすれば、他の精神療法と比較検討することができるのではなかろうか。
その上でどの精神療法を選択するのか、あるいはどれとどれを組み合わせて取り組んだらよいのかは、相手に一任するのがベストなのではなかろうか。
その中で森田療法理論の特色が相手に伝われば十分なのではないかと思う。