カテゴリ:第1章 哀しみに散る花
屋敷に戻ると、私の誕生日の準備が着々と進められていた。 気の早い招待客数人が、公園とも言える広々とした庭を散策していた。 その中を私はペガサスに跨り、呆然と眺めながら彼らに会釈し、厩まで手綱を繰った。 幾人か私に気付いたらしく嘲笑する声が聞こえる……。 「まぁ!見て!あのカッコウ」 「ヤマザルみたいですわね。クスクス」 なんとでも言えばいいわ…… 疲れきって、背を丸め、心も髪も乱れたまま、私は馬上で虚ろな目を漂わせていた。 ポールとペガサスに礼を言うと、そのまま部屋へ戻り、ベッドにばったりと倒れこんでしまっていた。 暫くすると、部屋をノックする音がした。 「お嬢様、パーティーの支度をしませんと……」 「出たくないわ」 そんな気分じゃない。 ベッドの奥に潜り込んでいると、外でエドの声がした。 そして、数回ノックしても返事をしないと分かると、ドアを開けて勝手に入ってきた。 「アリシア、今日の主役が欠席するなど……。そのような礼を欠くようなことをしてはいけないよ」 「でも、出たくないわ……」 エドはベッドの淵に腰を下ろし、「ふー」と溜息を洩らした。 「分かりました。僕があなたを抱き上げて連れて行ってあげましょう」 「いやよ!」 私はガバッとベッドから起き上がると叫んだ。 「では、ちゃんと着替えてご自分の足でお歩きなさい」 「いやっ!!」 「だだっ子ですね」 エドはすっとベッドから立ち上がると、不意に私の手を引き、その腕に軽々と抱き上げた。 「花嫁が変わった娘だと、噂が立つのは僕としてはウェルカムですよ。 むしろその方が、あなたに群ろうとする変な虫を追い払う苦労をしなくて済みますからね」 「……下ろして。不愉快だわ」 拳を振り上げて、エドを叩こうとした瞬間、扉をノックする音に、はっとし、踏み止まった。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります 「フラワーガーデン1」はこちらです。良か ったらお楽しみ下さい♪ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.05.14 07:04:50
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