カテゴリ:第1章 哀しみに散る花
アリシアの護身術の次なる犠牲者は意外にも(と言うか当然?)僕だった。 「先生、ごめんなさい……。大丈夫?」 「いいから。気にしないで」 彼女のパンチで勢い良くぶっ飛んだメガネは見事にオシャカになり、僕の頬も腫れ上がった。 壊れたメガネのフレームの片方をリュックに突っ込み、ぶら下げると、それが歩く度にカタカタとチャックに当たり、痛々しく揺れていた。 モーテルを出発し、とりあえず次の宿を求めて歩いている途中で、ションボリと後ろを歩くアリシアに手を差し出すと、一瞬、嬉しそうに笑うものの、次の瞬間、彼女は恥かしそうに目を伏せた。 僕も差し出した手を持て余し、髪をクシャクシャと掻いた。 しっかり、警戒されている…… 「お腹、空かない?」 「え?!ううん」 「少し、休む?」 「え?!ううん」 まずい。 会話が続かない。 しかも、病み上がりの彼女の顔には早くも疲れが出ていた。 「ホテルで休もう」 「え?!ううん!!!!!」 ……やっぱり、ばっちり警戒されてる。 彼女が真っ赤になるから、僕も真っ赤になる。 それが余計に彼女を真っ赤にする。 まいったな…… 気まず過ぎる。 その時、背後からクラクションを鳴らす音がし、2人ともビクッと飛び上がった。 「Hi!」 車から20代前後の長い髪をしどけなく垂らした女が顔を出し、にこやかに手を振った。 「良かったら、乗んない?」 アリシアは、女を指差すと、「あ!さっき、エッチしてた人!」と叫び、僕は慌てて彼女の口を塞いだ。 「あっはっは~。やっぱ、あの時のコ達じゃ~ん♪」 「あ。その節は、どうも」 僕は顔を火照らせながら、間抜けな挨拶をした。 「イイわよぉ。お蔭ですんごい燃えたし。あいつも喜んでくれたしぃ~。お礼に送ったげるぅ」 「いえ、いいです。デート中にお邪魔しては」 と、言い掛けて、男が同乗していない事にハタと気付いた。 「あ~。あれね~。男じゃないよぉ~。キャクゥ~」 アリシアは首をちょこんと傾げると、とても無邪気な笑顔で僕に質問した。 (ねぇ、先生。「キャクゥ~」ってなあに?) (だ、か、ら、無邪気に僕にそーいう話題、ふらないで下さい!) (そー言う話題って??) ボソボソ話し合う僕達に痺れを切らしたのか、女は、車のドアから半身を乗り出すと、 「ねぇ~。乗るのぉ?乗んないのぉ?」 と、口を色っぽく窄めながら、腕を窓の上に置き、タワワに実った胸をその腕の上に乗せた。 豊かな胸の谷間が覗けて、僕は目のやり場に困ってしまっていた。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります 「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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