2024/09/27(金)00:59
『日本語の乱れ』(復刻2)
『日本語の乱れ』という本に名古屋弁の面白さが出てくるのだが・・・
関西のお隣にこんな面白い方言を喋る地域があるのか♪と思うのである。
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図書館で『日本語の乱れ』という文庫本を、手にしたのです。
日本語を題材にしてパスティーシュ小説を書いたり、茶化すことにかけては第一人者なので興味深々なのでおます。
【日本語の乱れ】
清水義範著、集英社、2003年刊
<「BOOK」データベース>より
日本語に未来はあるのか!ラ抜き言葉、意味不明な流行語、間違った言葉遣い、平板なアクセント、カタカナ語の濫発…日本語の現状を憂う聴取者からの投書の山に、ディレクターは圧死寸前!?(「日本語の乱れ」)。その他、比喩の危険性、音声入力の可能性と限界、宇宙を蹂躙する名古屋弁など、言葉をテーマにした傑作12篇。
<読む前の大使寸評>
日本語を題材にしてパスティーシュ小説を書いたり、茶化すことにかけては第一人者なので興味深々なのでおます。
rakuten日本語の乱れ
「2001年宇宙の恥」あたりを、見てみましょう。これもまた名古屋弁に関する自虐モノになっています。
p248~253
<2001年宇宙の恥>
スペース・クルーザーは無事にピッグフード空軍基地のⅭ滑走路から飛びたった。ただし、自力で飛びあがったのではない。
全長12メートルと小型のスペース・クルーザーは、大型ジェット機スカイロードF3の腹部に抱きかかえられるように取りつけられており、飛翔したのはそのスカイロードF3のほうだった。巨大なエイの腹に小判鮫がとりついているような格好だと思えばよい。
スペース・クルーザーの機内には15人の人間が乗っていた。主パイロットと副パイロットとフライト・アテンダントが乗務員。いずれも男だった。
残る12人が乗客である。男性が10名に女性が2名。女性は二人ともアメリカ人。
10名の男性客のうち、5人がアメリカ人であり、1名がインド人だった。インド人は頭にターバンを巻いている。
そして、なんと4人もが、事もあろうに日本人だったのである。
2001年12月吉日のことだ。
スペース・クルーザーとは、この年からフライトを開始することになった、民間の商業スペース・シャトルである。アメリカのゼビウス・ソルダム社が企画した、一般人が気楽に宇宙へ行き、無重力体験を楽しんでみようというツアーなのだ。登場チケットは一人につき9万8千ドル。それだけ払ってでも、宇宙へ実際に行きたいと思う人は世界中にたくさんいるに違いないという判断のもと、週2便のフライトが開始されたのだ。
その、第1回フライトが今始まった。
世界中から客が押し寄せ、今のところ7回目のフライトまで予約は満杯という状態だった。約10万ドルを払ってでも、宇宙へ行って無重力を体験し、地球を自分の目でながめてみたいという人は大勢いたのだ。これぞ21世紀の究極のレジャーだ、という人人もいた。
だから、日本人だって乗客となるのである。金さえ払ってくれ、健康診断さえパスしていれば、商業フライトなのだもの、どの国の人間だろうが客にするのだ。
しかし、その日本人はただの日本人ではなかった。4人全員が、日本の名古屋という都市に住む人たちだったのだ。ゼビウス・ソルダム社は、日本の名古屋という都市がどんなところで、そこに住む人間がどんな人たちであるか、ということまでは知らなかった。
飛翔してすぐは、乗員乗客ともシートにすわり、シートベルトを着用している。タバコはこの飛行の間中禁止されている。2時間半のフライトであり、機内はジェット機と違って密閉されているのだから、ノー・スモーキングで我慢せいということなのだ。
ジェット機に取り付けられて、空港から飛びあがるのだから、普通のフライトとまったく同じである。スペース・シャトルのように真上に向けてロケット噴射であがっていくのなら、大きなGに耐える訓練などもしなければならないが、そういう必要はなかった。これは一般人の観光宇宙ツアーなのだ。
だから、客たちは自由に談話していた。そしてもちろんのこと、4人の名古屋人は興奮して名古屋弁でしゃべりまくっていた。
「すっげぇわ、やっぱり。どえらけねゃあスピード出しとるがや」
「まんだ興奮するのは早あて。ただジェット機で飛びあがっただけだわ」
「そんでも普通より早あがや。ガンガン上昇しとるど」
「普通だて、こんなもん。まんだロケットふかしとれせんのだで」
前の席で後藤商事の社長後藤章司51歳と、中邦オート部品の鬼頭武則49歳とがそんな会話をしている。
そしてその後ろの席には、長谷川メンテナンス社長長谷川幸一53歳と、丸山製菓会長の丸山喜助62歳が並んでいた。
(中略)
ロマンチックな海外の都市に憧れて、ツアーでそこへ行く人は多い。花の都パリ、霧の都ロンドン、音楽の都ウィーン、そのほかにも、スイスヤドイツやスペインの古都。
海外旅行にそういうロマンを求め、美しい異郷に自分を立たせてみることが何よりの楽しみだという旅行者は決して珍しくない。
そういう旅行者にとって最大の不幸は、同行メンバーの中に、名古屋人のグループがいることである。
大阪人のグループというのも、かなりムードをぶち壊しにするが、それでもまだ大阪人のほうが害が小さい。めっちゃきれいやん、とか、うまいこと考えたるわ、とか、ごっつい入場料とるねんなあ、と言いながらも、一応異文化を楽しんでいる。
名古屋人は傍若無人であり、ヨーロッパだろうが、オーストラリアだろうが、栄や今池へ出た時と同じ気分で見るのだ。どこへ行っても緊張することがなく、大声でほんとのところを言ってしまうのである。あまりにも経済的合理性のことばかり考えている。文化に対する畏敬の念というものがない。
『日本語の乱れ』2:2001年宇宙の恥
『日本語の乱れ』1:日本語の乱れ
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2023.09.09XML
『日本語のこころ』(復刻)
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『気になる日本語』(復刻)
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