大富豪になる自由もあるが、貧乏人には過酷なアメリカ。
地方の自治体にとっても、当然として、国は甘いわけではないようです。
WEDGEからデトロイトの惨状を見てみるが、日本はどんな教訓を得るべきでしょうね?
12/4破産法適用 「犯罪都市」デトロイトを歩くより
今年7月に連邦破産法第9条による更正申請を行ったデトロイト市。米連邦破産裁判所は12月3日、その適用を認める判断を下した。デトロイトでは殺人、レ〇プはそれぞれ1日1件のペースで発生し、強盗は日常茶飯事である。
デトロイトに到着後、市中を車で走っていると、「異形」と形容するに相応しい何とも薄気味悪い巨大建造物が目に飛び込んできた。地図を広げてみるが特に記載はない。近寄ってみると、それは1988年に廃駅となったミシガンセントラルステーションであることが分かった。1913年に建てられ、世界一の高さを誇る駅として名を馳せた。
旧ミシガンセントラルステーション
窓ガラスはなく、有刺鉄線を上部に巻き付けたフェンスで囲まれていることから、駅に立ち入ることはできない。周辺はスラム化しており、人の気配はない。駅前にポツンと建っていた一軒家は放火された影響からか黒く焦げ、屋根は朽ちていた。
<荒廃した「自動車の都」 デトロイト>
「トキョー」。オリンピック開催地決定の報せに東京は歓喜した。一方、吉報の届かなかった都市は大いに落胆した。イスタンブール、マドリッドでなく─デトロイトの話である。
もっともこれは2020年の夏季オリンピック招致を巡る話ではなく、遡ること約半世紀、1964年の夏季オリンピック招致の話である。ウィーン、ブリュッセルも最終選考に残っていたが、東京にとって最大のライバルと目されたのがデトロイトであった。
激しい誘致合戦を展開していた50年代、デトロイト市とその周辺地域はビッグスリーと呼ばれるGM(ゼネラルモーターズ)、フォード、クライスラーが本社を構える「モーターシティ」として栄華を極めていた。市の人口は180万人を超え、自動車関連の産業が雇用を創出、目抜き通りのウッドワードアベニューはニューヨークのフィフスアベニュー(5番街)のライバルと目される、大国アメリカを象徴する都市であった。
しかし─。今年7月、デトロイト市は約180億ドル(約1兆8000億円)というアメリカの地方自治体として最大規模の負債を抱え、裁判所に連邦破産法第9条(チャプター9)による更生申請を行った。日本で地方自治体財政破綻と言えば夕張市の事例が有名だが、第3セクターや公社を含む負債総額は600億円程度である。180億ドル(1兆8000億円)というデトロイト市の負債規模に改めて驚く。
デトロイト市内の路地。こうした光景は市内の至るところで見ることができる。 「市内は凶悪犯罪が多くとても危険。移動はタクシーを使うなど、極力歩かないほうがいいよ」。住民はそう教えてくれた。ダウンタウンの中心部には、GM本社やマリオットホテルなどが入居するルネッサンスセンターがあるが、その周辺わずか数百メートル四方のエリアを除けば、市内は廃墟となった家屋やビルが目立つ。公園にはホームレスがたむろしており、とても子どもが遊ぶ環境には見えない。
デトロイト到着日の夕刻、レストランを探しに市内を歩き回ったが、営業している店舗が見付からず、夕飯にありつくのに苦労した。治安が極端に悪いことから、夜は早々に営業を終える店舗が多いという。廃屋はギャングのたまり場や麻薬取引の場になっており、かつて全米を代表する都市であった「自動車の都」の姿はなかった。
デトロイト市にまつわる統計データは悲惨だ。
〇人口68万人(最盛期は185万人で60%超の減少)
◯失業率18.3%(全米平均8.0%)
◯暴力犯罪率は全米一で国内平均の5倍(20万人以上の主要都市)
◯年間13万件超の犯罪が発生し、検挙率はわずか8.7%
◯1年間で殺人344件、〇姦426件、放火958件、強盗・窃盗・盗難4万8735件
◯街灯の40%が故障
◯警察官は通報してから到着するまで平均58分(全米平均11分)
ふつう住みたいとは思わないだろう。
<取り残された?黒人貧困層>
デトロイト市の人口動態を分析すると、面白い現象に気付く。下の図を見ると一目瞭然だが、デトロイト市内の白人比率は年々低下してきた一方で、黒人比率は年々上昇した。50年代の白人比率は80%を超えていたが、現在では完全に逆転し、80%超が黒人となっている。
デトロイト市が華やかなりし頃、「デトロイトに行けば職がある」とアメリカ国内から多くの労働者がやってきた。海外からの移民もおり、実際、取材をしている中でギリシャ、バングラデシュ、パキスタン、ポーランド系のアメリカ人と出会った。だが、移住者の圧倒的多数はアメリカ南部で差別に苦しんでいた黒人であった。彼らは市内に居を構えた。
しかし、白人優位の差別政策に黒人が反発し、67年に大規模な黒人暴動が発生した。以来、「ホワイトフライト」と呼ばれる白人の郊外移住が加速した。「モーターシティ」らしくデトロイト周辺地域にはハイウェイが整備され、郊外とのアクセスは良好であったが、皮肉にもこれが郊外化を助長した。企業も安価で広い土地を求め、郊外へ去っていった。
(中略)
デトロイト市の破綻は複数の要因が絡み合った結果である。「自動車産業の凋落」も要因の1つであるが、これを最大要因とする声は少ない。
ミシガン大学のマーティン・ジマーマン教授は「デトロイト市は人口が減り続ける中、インフラを往年の規模のまま提供し続けた。そして公務員OBの年金や医療保険もそのままにしておいた。つまり、市は縮小する状況に対して、有効な手を打たなかった。これが大きな要因」と説明する。
市の負債180億ドルの約半分は年金、医療保険の支払いといったいわゆる「レガシーコスト」である。現在、退職して年金をもらっている市の元職員の数が現職の約2倍、2万人もいる。デトロイト市の破綻手続きに関する今後の裁判では、いかにレガシーコストを引き下げるかが焦点となっているが、公務員OBは引き下げに反対し、市内でデモを行っている。強力な労働組合と州憲法の規定もあり、改革は一筋縄でいくものではない。市債の償還と利払いも大きな負担としてのしかかっている。市債の負担軽減は破産手続きを経る必要があり、投資家との交渉という難題も待ち受ける。
前出のジマーマン教授は「自動車産業だけに頼るのではなく、ハイテク産業を誘致するなどして、税収を増加させるとともに、治安や教育レベルを向上させ、働きたくなる、住みたくなるような町づくりを推進すべきであった」と続ける。「デトロイト市の破綻原因は行政の怠慢」と言い切る人も多くいた。
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まあ 酷いほどの惨状ではないか。
多民族国家、連邦制など日本とベースが違うので、日本向けにフィットする教訓はあまり無いように思うのだが・・・
つまり、日本の場合、こうなる前に都道府県や国家が介入するだろうと思うが、それが(ほぼ)単一民族のまとまりなんだろう。
でもデトロイト市の惨状から以下のような教訓を見出すことができるのではないでしょうか?
・企業城主に頼らない町づくり
・地方自治体の財政(既得権益システム)の甘えを許さないこと。
・日本には、夕張市の予備軍のような地方自治体が多いとか。
・中央官庁を真似たような市債経営は破綻の危険をはらむ。
・アベノミクスは投資家優遇、企業優遇、地方切捨てを目指している。
このエントリーも
個人的経済学に収めておきます。