またひとり
私のことを愛してくれる人が、またひとり亡くなった。幼い頃。グズで、引っ込み思案な私を。前に前に押し出してくれるような人だった。叔母が独身の頃。よく一緒に寝たいとせがんだ。物心がついた時には、私だけ毎晩祖母と一緒に寝る決まりになっていた。父や母と一緒に寝たいと言うと。祖母は怒りだし、部屋から追い出された。弟は両親と寝られるのに。私は両親と寝たいと口にするだけで人を不機嫌にさせる。出て行けと言われても、両親の元へ行ってはいけないと分かっていた。ひとしきり泣いて、その場にうずくまる。そんな私を。仕事帰りに発見する叔母は。祖母の元へと戻る橋渡しをしてくれたり。自分の部屋で一緒に寝かせてくれた。叔母と寝たいと言う時だけ。祖母は怒らなかった。叔母は幼い私の、心の避難所だった。大人になってからは。耳の痛いことをよく言われた。まるで、祖母のように。厳しい事を言う人は。自分に対しては、その何倍も厳しい。険しい道を選ぶ、チャレンジャーのような人だった。愚痴らず、明るく前向き。3度の大病も乗り越えた。幼い頃の私には光のような存在で。大人になってからは。自由すぎる私に苦言も厭わない子育ての先輩だった。沢山のエピソードを思い出す時。今しか分からない愛情を受け取っている。私が成長や変化をしたからこそ、気がつける愛情がある。今は亡き、祖母、父、叔母。振り返ればいつもそこに愛情があり。気づかれるのをじっと待っている。亡き人達から、私は今もなお愛され続けている。