『海神』染井為人
初めての作家さんです。読んでいくうちに、岩手県山田町でNPO法人の代表が震災復興事業を請け負い、国の補助金を騙し取った、というニュースを思い出した。検索してみると、山田町復興記録誌「NPO法人大雪りばぁねっと事件」その背景と教訓、という冊子が作られており内容が殆ど同じだった。違うのは最後にNPO代表が逮捕されず行方不明になっていること。気の毒なのは小説にも描かれている地元住民。当時の行政や残された住民にとって彼は救世主だったはず。騙された方も悪いとは決して言えない。この冊子を読んで裁判の刑の軽さに驚いた。刑事裁判で、代表は懲役8年の求刑に対して懲役6年の判決。被告の控訴も上告も棄却されたので懲役6年が確定。求刑より軽くした理由は、「震災直後の被災地で、行方不明者の捜索や、 浴場施設運営の業務に当たり、地域に貢献 したことを考慮した」民事裁判では、6億7千万円のそんがい賠償請求に対し、一割にも満たない、5681万円の支払い命令が出た。その理由は、「違法性を裏付ける主張、立証が十分ではない」その後、町の人たちは、善意のボランティアに対しても不信を抱くようになってしまったということです。本の感想ではなくなってしまいましたが、震災について、改めて考えさせられました。海神 [ 染井為人 ]