香田洋二『北朝鮮がアメリカと戦争する日』
元統合幕僚会議事務局長・自衛艦隊司令官の香田洋二が一ヶ月前に出した本。副題に「最大級の国難が日本を襲う」とある。 彼は「冷静な現状判断からは、戦争にならないという結論を導くほうが難しい」と主張する。しかも「開戦するか否かは北朝鮮の出方によらず、アメリカ自身が決めること」「相手がどう出るかは関係なく、自分たちにとって一番良いタイミングを見計らって実行する、それが軍事作戦の要諦」であるとし、「アメリカは国連や同盟国にさえ相談せず、自らに最適のタイミングを選び一方的かつ強烈な一撃を北朝鮮に加えるでしょう。これこそが米軍が伝統的に最も得意としてきた戦い方、Shock and Awe(衝撃と畏怖)なのです」と書いている。 北朝鮮は間もなく大陸間核弾道ミサイルを完成する見通しであり、アメリカが武力攻撃に踏み切るのを時限爆弾にたとえると、「すでにスイッチは押されている」し、セットされた時間は最大で「一年」であるという。 とっくに日本全域を射程に入れているノドン・テポドンミサイルは数百発存在していると考えられ、過酷な訓練で知られている特殊部隊の奇襲・ゲリラも考えられる日本への攻撃も、当然ながら想定せねばならず、確かに「最大級の国難が日本を襲う」ということになる状況なのだろう。 アメリカに小判鮫のようにひたすらくっつき、そればかりか先制核使用を放棄宣言しようとしたオバマ大統領にそれを思いとどまらせるよう強力に働きかけた日本政府の態度は、本当にそれでいいのか。 先の大戦でも日本国民は戦禍が自分たち自身にまで及ぶとは考えずに、真珠湾攻撃を万歳さえして迎えた。戦争のもたらす被害の大きさを知っているつもりで、時の流れとともに忘れ去ってしまう。政治家や官僚は我が身の振り方や目先の利益に眼を奪われ、考え行動しなければならないことを無為にやり過ごしていく。政治を軍人に任せたら、行きつく所は戦争なのかもしれない。大政治家はいないのか。