小娘、踏み台に登る
洗面所で呑気に歯を磨いていたと思いねぇ。「あだー」左斜め下から小娘の声がする~、とちらりと視線を向けると、洗面台の縁に、小さな手がふたつ、ちょこんと並んでいるではないか。慌ててそちらを見れば、娘用に用意してある高さ25cmほどの踏み台にちゃんと登った小娘が、洗面台の縁に両手をかけて、満面の笑顔で私を見上げていた。「あだー」そりゃあもう、天使の笑顔。この手の笑顔の裏には、大抵お尻に黒い尻尾が隠されているのだ。そう、先のとがった、アレ。昨日、最初の一歩を会得したと思ったら、今度は踏み台を利用する術を会得したらしい。その後、ことあるごとに踏み台に登るようになった小娘は、踏み台の所有権を主張する娘との間に、激しいバトルを繰り広げることになったのであった・・・。おちおち顔も洗えりゃしねぇ。