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カテゴリ:日々是好日
「作業日誌」(06/06/30参照)に書いたように、先日、新規就農希望の若者が二人見えた。 若者はもち論、そもそも人と会う機会が滅多にないものだから、まして就農希望の若者とは ここ数年会ったことがないものだから、2-3時間も話し合ってしまった。といっても、殆ど は僕が喋っていたが、その対話の記録。当然、時間的経過を追って書いてはいない、思い 出すまま・気の向くままだ。 メモを取ったわけではないし、一部、別の機会の会話も入っているし、ここまで踏み込んで 話をしなかった内容も含まれているから、実際には、若者との対話に仮託したフィクション といったほうが良いかも知れない。若者に見せて校正を依頼すれば、「俺達は、こんなこと を云わなかった・聞かなかった」と云うかもしれない。しかし僕が自分の発言として書いた ものはすべて事実と経験に基づくもので、フィクションはなにひとつ含まれていない。仮に 当の若者の眼に触れれば、当日の言葉足らずの面の補足と理解していただきたい。 夕刻近く「農業委員会から紹介されました」と云って若者が二人、作業場に入ってきた。 「新規就農で、普代村に見えたそうで、その体験談をお聞きしたいと思いまして...」 「僕に会えって...?農業委員会は、なんで僕を指名したのかね、聞いてみた??」 「いえ、特に聞いていませんが、新規就農募集のパンフレットを見せて頂いたら載っていま したので」 「成る程、それで何が聞きたいの?」 「普代村に、縁があったわけでもないのに、何故、普代村に来たのかと思いまして..」 「そんなこと聞いてどうするの?」 「どういう点に惹かれたのかと思いまして..」 「実は、農業をやろうと決めてから、新規就農者を募集している全国の市町村の中から60 ヶ所くらいを選んで手紙を出したんだ。そのうち20ヶ所くらいの役場、普及所、農業委員 会から返事が来て、手紙のやり取りをしたり、実際に会ったりした。地域によって中心窓口 になる所は、役場だったり、普及所だったり、農協や農業委員会だったり色々だね。実際に 会ったのは熊本、鳥取、岐阜、岩手(3ヶ所)、北海道(2ヶ所)」「全体としての傾向は 南の方は、来るなら来ても良いよという程度で熱がない。その点、北の方は熱心だったね。 是非来て欲しいという意欲が感じられた。担当窓口の担当者の個性や熱意によっても当然差 はあるはずだけれど、それでも北と南ではハッキリと差があった。それだけ北の農業環境は 厳しく、南は相対的に裕福なんだと僕は理解した」「新規就農者を募集している市町村の内 経営モデルのようなものを用意していたのは4-5ヶ所、特にこれといってハウスのトマト 栽培を薦められたのが岐阜。一応、栽培体系は確立していて、都市近郊農業で決まった市場 もある、何棟のハウスをやればどのくらいの収入があって、収益率はどのくらいと計算でき る。そういう意味では技術さえキチンと習得すれば、ある程度、生活は保障される。しかし 僕は農業をやりたいというより、自分の後半生は自然の中で暮らしたい。都会には、もう僕 の居場所はないし、やりたいこともない。田舎で、自然の中で、自然を相手に暮らしていく には、農業をやるしかないということで、農業をやるというのが動機だからね。生涯をハウ スの中でトマトを採って生きていくなんて出来るはずがない。生活を保障したいなら都会に いれば良いし、遥かに効率的に保障できる。そういうわけでハウス経営は、全然、やる気が なかった」 「最近数ヶ月間に、7-8ヶ所(5-6ヶ所と云ったかな?)廻ったんですが、どこも同じ ようなパターンでホウレンソウを薦められました」 「それは、そうだろ。久慈管内はホウレンソウ一本槍みたいなもんだし、他にキュウリとか 花とかあるけれど、ホウレンソウで売上なんぼというのが目標だからね。ホウレンソウが良 いというより、他にこれといって薦められるものがないということだね。農協はそれでも良 いかも知れないけれど、10年-20年というスパンで考えてみれば、ホウレンソウの経営 に将来性があるとは考えられないね。別段、そんな先の見通しにたってやらなくとも、状況 次第で転換を考えても良いけれど、ハウスの中で、生涯草取りをやって暮らしたいと思うか い?とても若い男に向くような仕事じゃないね。ここには、いままでに新規就農で7人来て 5人は辞めて出ていった。二人だけ残っていて、一人は僕、もう一人は夫婦で50棟くらい ハウスでホウレンソウをやっている。40歳くらいだけれど、自分はハウス内を耕したり、 タネを播いたりだけやってるね。ホウレンソウの収穫とか草取り、選別・調整・袋詰めのよ うな作業は奥さんが中心になってオバサン達を雇ってやってる。こういう形態なら考えられ るけれど、それには数十棟の経営が必要だし、そうなると転換が難しいね。地域ぐるみとい うのは、生きていくには便利だけれど、経営としての自由度は少ない」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006/07/06 08:40:39 AM
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