|
カテゴリ:リンボウ先生
6時前に仕事を終えて、親子丼で腹ごしらえをして、職場から徒歩で20分足らずのTOKYO FMホールへ向かう。PCM衛星デジタルラジオ放送 ミュージックバード創立20周年記念の「朗読とコンサートの夕べ」『リンボウ先生が読む漱石「夢十夜」とその世界』を聴きに行く。
波多野睦美の歌、つのだたかしのリュート、林望の朗読という組み合わせは絶妙で、リュートの伴奏のイギリス歌曲で恍惚としたかと思うと、平家物語の朗読で涙ぐみそうになったり、鼎談では笑いすぎて涙が出たり…と、登場人物3人ということを忘れてしまうくらいバラエティーに富んだ愉しみ方ができた。 一番愉しみにしていたのが平家物語の忠度都落の朗読だった。以前にも書いたけれど、この場面は平家物語の中でも特に好きな場面の一つで、死を覚悟して都落ちする忠度が、その最期の願いとして自作の和歌を勅撰集に選んでもらいたいと俊成に託し、俊成はその後撰んだ千載集に朝敵となった忠度の和歌一首をよみ人しらずとして採ったという俊成と忠度の信頼関係とそれぞれの想いに、何度読んでもウルウルしてしまう。自分の想いとは別に自分の立場に殉じなければならない忠度が、鎧の下に和歌を集めた巻物を隠してわずかな手勢で俊成の元を訪れた気持ち、俊成に受け入れられて見事に未練を断ち切って漢詩など高らかに口ずさみながら落ちて行く潔さ、そして朝敵となった後も忠度の想いをしっかりと受け止めて、その実現のために精一杯の力を振るった俊成の誠実さ…、こうして書いていても涙が出そうになる。ああやっぱりいいなあ。 それを師匠林望の朗読、つのだたかしの平曲の琵琶を思い出させるクラシオーネ(だったかしら?)で聴けたのは、もうそれだけで満足である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年04月29日 01時51分31秒
|