【本】ノンフィクション『大学病院の奈落』
群馬大学病院で手術を受けた患者8人が相次いで死亡し、いずれも同じ男性医師が執刀していた……という医療事故から始まる、数々の問題について書かれたノンフィクション。 『大学病院の奈落』 高梨ゆき子 講談社文庫 2023年大学病院の奈落 (講談社文庫) [ 高梨 ゆき子 ] 遺族としては「群大といえば最先端の病院」「天下の群大」という地元独特の認識もあって、患者の死亡について訴えずにあきらめていたそうです。 一方で病院側は、トラブルにならないのは、医師が親身に診療したから患者が亡くなっても遺族は感謝しているだろう、と都合のよい受け取り方をしていた様子。 患者や家族に対して手術の説明が不充分だったり、カルテの記載に不備があったり……個人の資質の問題はありつつも、学長選を控えての取引疑惑や隠蔽、第一外科と第二外科の対立関係なども含め、病院全体にも問題があったことがわかります。 なお、問題の執刀医も診療科長の教授も、自分自身にそれほど落ち度があるとは認めていないようで、大学病院を辞めても別の医療機関に勤めて医師として診療を続けているそうです。 問題を起こしても医師を続けられる制度がこわいと思いますし、一体どのような心境で医師として働いているのか気になりました。大学病院の奈落【電子書籍】[ 高梨ゆき子 ]