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ブログタイトルに入っている言葉がついてるんだもの、読まなきゃ!と気にかけていた角田光代の「空中庭園」。文庫化したのでようやく購入した。どんな風に「空中庭園」が使われているかドキドキものだったけど、だいたい想像した範囲におさまっていた。
角田光代は、「対岸の彼女」はじめ相当かため読みしてる。いつもながらうまいなあ、と感嘆。日本の現代家族を語らせたらかなりのリアルさで迫ってくる。彼女の描く家族の生活場所は郊外を思わせるところが多い。この人ひょっとして家族社会学でも勉強してるのか?妙に典型的な家族の生活風景が出現するのはなぜだろう。 「空中庭園」は、もうとっくに壊れているのに壊れていないことになっている家族が住むダンチのベランダガーデンだ。たしかに、いっぱんに主婦がガーデニングにかける熱意の、ある一断面を掬い取ってはいる。でも、この人自身は、園芸にはあまり興味ないんだろう。花を陳列するインテリアと同列にしかみていない、つまり、「空中庭園」でなくても、「手作りカーテン」とかでよかった程度の位置づけである。という意味では、かなり期待ハズレかな。 憑かれたように庭の手入れをしてしまう、そういう人間の切実さっていうところに、もっと入り込んでほしかった。家族がいてもいなくても、この世のいらだたしさみたいなものから、一時でも逃れることができる限り、飽くことなく庭園をつくる。延々と古来からつづいてきた人の営みだ。それを、虚しいものとするのか、人間くさい代物と考えるか。 技巧派の角田光代は、あまりにも巧いので「彼女の作った世界」に確実に引き込んでくれる。けれども、「空中庭園」の使われ方のフツーさに、物足りなさを感じ始めると、物語の設定がどれも陳腐にみえてきてしまい、すこし残念だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005/08/15 12:12:30 AM
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