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カテゴリ:芸能
近世後期、京都の庭園を図会にして出版した本、いわゆる旅行ガイドのようなもの(?)で、近世期にはこのての本が沢山出ている。「うちにあったはずだよな~」と思いながら帰宅して探してみたが、ないっ!
昭和40年頃に出た『新修京都叢書』の1冊だと思っていたら、それは勘違いで、収載されていなかった。どこに行ったのだろう…… 都の名庭園といえば、古くは「河原院」。源融(みなもとのとほる;河原左大臣)が陸奥塩釜の浦を模して作ったという六条河原の邸宅である。贅を尽くして作ったこの邸は、源融没後、藤原氏の勢力拡大とともに寂れ、歌人たちが温故の場とした。能『融』もそうやって立ち寄った僧の前に融の霊が現れるという形になっている。 『融』は不思議といえば不思議な曲で、劇的な展開はなく寂れた邸の秋の場面を描くだけなのだが、詞章が美しく、日本人好みの景観を見せる。現在の分類では一応妖怪変化(←大雑把)の切能に入るが、おどろおどろしいタイプの切能ではない。今日観た『融』は前場を大きく省略する“半能”の形式で、後場の、融の霊が現れて昔日を偲びながら舞を舞う場面が抽出される。 『融』は非常に小書の多い曲で、今回はワキ方の最初の台詞が変わる小書<思立之出>と、最後の[早舞]に変化を付ける<舞返>の2つが付いた。 <舞返>は通常の[早舞]が長くなり、途中で橋掛りに移動する演出が入る。寂れた庭で舞う融の霊が、自在に移動するかのような印象で、庭をいったん離れた霊が、興趣に惹かれて再び舞い戻るようなものかと自分は解釈している(本当のところは知らない)。 舞に変化のある小書も面白いのだが、しばらく小書の付かない『融』を観ていないので、ノーマル版も久しぶりに味わいたいなぁ、と思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.07.08 01:18:47
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