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カテゴリ:旅行
雨でぬれるとアスファルトは黒く見える。
ホテルの駐車場は、白かった。がらんとして、他に車は4台だけだった。 「あ。ここ、降ってなかったみたい」 車のドアを開けて足をおろし、びっくりした。「雪積もってる…」 道で降っていた雨、ここでは雪だったのだ。「天気予報の通りや」 フロントにいた男性は、「「お待ちしてました」と笑顔で迎えてくれた。8時20分前だった。 「遅くなりまして……。着いたらすぐに食堂へ行ってくださいということでした」 「はい。でも、先にチェックインしてください」 そうか。最後の客だから、玄関はもう閉めるのらしい。名前と住所を書いて、部屋のキーを受け取った。カバンは車に積んだままにして、食堂へ行った。三つのテーブルにまだ人がいた。みんな到着が遅かったのだろうか? ホテルの支配人らしい人がにこにこして、「お疲れでしょう」とドライバーを労った。女子従業員はいなくて、背の高い青年が一人いた。一人鍋の蟹チリが付いた懐石料理だった。窓のカーテンは開いていたが、外は真っ暗でなにも見えなかった。部屋の灯りで雪は見える筈だが、見えなかった。支配人がお皿を運んでくれて、料理の説明をした。煮物もナベも、ほとんど味がなかった。こんな寒い地方だったら濃いめの味の方がいいのに。ご飯は、私がよく夜食に食べるのと同じ、白いご飯に小さなジャコを乗せて醤油をかけただけのシンプルなジャコメシで、ショータンは気に入ったのか、珍しくお変わりをした。 中年のカップルと、初老の夫婦(らしい)と、なんだかわからない3人連れが順番に席を立って、私達だけが残った。向こうの方に立っていた青年がやって来て、「何時間ぐらいかかられました?」と訊いた。「9時間です」「へー。9時間!? 」 と感心して貰ったけど、よく考えたら、11時間余りかかっていた。 「ここはスキーで賑わうんですね」 「はい。まあ。でもうちは、そんなにお客さんいないと思います。夏にここへ来ましたから、雪、初めてです。初雪です」 「はつゆきですか」 「びっくりしました」 言葉使いが耳馴れていたから、大阪の子らしい。 「ごちそうさん」と食堂を出かけたら、支配人がデザートのお盆を持って追いかけて来た。 「あ。もう結構です」 「でしたら、お部屋でゆっくり召し上がってください」 ショータンはお盆を受け取った。 6階の部屋へ行ってお盆を置いてから、車の中に置いてままのカバンを取りに1階へ降りた。雪はまだ少し降っていた。 高山の、雪が積もった林。ここを過ぎると小雨。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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